若手ビジネスパーソンの中には、「出世して、いずれは役員レベルのポストに就きたい!」と考え、日々努力している人も多いでしょう。では実際に出世して役員になったら、報酬はどれくらいもらえるのでしょうか。上場企業であれば、公表されている「有価証券報告書」を読むとすぐに調べることができます。
有価証券報告書とは?
証券取引所などに株式を上場している企業は、事業年度が終了してから3ヵ月以内に「有価証券報告書」を作成・提出することが義務付けられています。
この有価証券報告書は、株式投資家などが各企業の財務状況を判断する際などに活用されるもので、虚偽記載や提出の遅れは処分の対象になります。省略して「有報」と呼ばれることもあります。
無料で手に入る(閲覧できる)ので、株式を購入するときに参考にしたり、就職・転職活動でのリサーチにも役立つでしょう。また、仕事で業界分析をしたり、自社との経営指標を比較したり、営業活動でも活用できるでしょう。
内容としては「企業の概況」「事業の状況」「経理の状況」などで構成されており、それぞれ記載しなければならない項目があらかじめ定められています。
有価証券報告書には、役員報酬額の記載も
この有価証券報告書に、役員一覧や役員の報酬額などについて記載されています。
さらに、連結報酬などの総額が1億円以上の役員に関しては、該当する役員の氏名と報酬の総額も記載するのがルールです。
つまり、自分の勤める企業が証券取引所に上場している場合、公表されている有価証券報告書を閲覧することで、役員の人たちがどれくらいの報酬を得ているのか、将来役員になったときの大体の報酬額の見当がつきます。
有価証券報告書は、各社の公式ホームページ内にあるIRページから、誰でもその中身を閲覧することができますし、金融庁のサイト「EDINET」からも閲覧が可能です。
実際に上場企業の有価証券報告書を読んでみよう!
ここからは実際に、上場企業の有価証券報告書のページをめくっていきながら、役員報酬の金額がどのように記載されているのか、見てみることにしましょう。
老舗のある大手総合商社
日本でよく知られた、ある総合商社の有価証券報告書(2018年4月1日~2019年3月31日)を開くと、取締役報酬制度の概要に加えて金額の算出方法や決定プロセスなどについて説明された上で、役員区分ごとの「報酬等の総額」などが記載されています。
社内取締役については、人員が5人で報酬等の総額は17億3,100万円とされ、その内訳についても、「月例報酬」が4億4,500万円、「賞与」が10億円、「特別賞与」が1億1,300万円、「株式報酬」が1億7,300万円と公開されています。
前述の通り、報酬等の総額が1億円を超える役員については、氏名とともにその総額が公表されています。この企業の場合5名が該当しますが、そのうち代表取締役会長の総額が5億8,900万円で最も多く、代表取締役社長の総額が4億1,700万円と続いています。
ほかにも金額1億円を超える3人の取締役の報酬等の総額が2億3,800万円、2億5,000万円、2億3,800万円と記載されており、会長と社長を含めたこの5人の金額を合計すると前述の17億3,100万円(※)となります。
※有価証券報告書における報酬等の総額においては、100万円未満は原則切り捨てで記載されていることなどもあり、各役員の金額を合計しても完全にこの金額とイコールにはなりません
急成長を果たしたある新興IT企業
続いて、急成長を果たしたある新興IT企業の有価証券報告書(2018年7月1日~2019年6月30日)を読んでいきます。
この企業の有価証券報告書でも、どのように報酬等の金額が決められているのかが説明された上で、役員区分ごとの報酬等の総額などが表で説明されています。
取締役5人の報酬等の総額は2億5,000万円で、その内訳としては「固定報酬」が2億5,000万円、「業績連動報酬」が0円、「退職慰労金」が0円とされています。
この企業の当該事業年度においては報酬等の総額が1億円を超えている役員がいなかったため、個別の取締役の報酬額は記載されていませんが、「2億5,000万円 ÷ 5人」と計算すると、役員の平均報酬額が5,000万円であることが分かります。