そんなことより、和牛、解散? ちょっとそれは、寝耳に水どころの話ではなかった。突然、寝床に火を放たれた。もう飛び起きるしかなかった。和牛が、解散するのか? 本当に?

 近い将来、NGKの看板になる漫才師だと思っていた。上方漫才大賞だって、予定された未来だと思っていた。もう特に、注目もしていなかった。当たり前に漫才の舞台に立ち続け、当たり前に大御所になっていく。そういう漫才師だと思っていた。何より本人たちが、そんな展望を明かしていたじゃないか。

 水田信二が、3年ほど前から劇場舞台に遅刻するようになったという。「徐々に彼を信頼できなくなり」と川西が記している。「彼」という他称が胸に刺さる。川西が水田を「彼」と呼んでいる。ここに書いてあることがすべてではないだろう。すべてを明らかにする必要などない。40歳を前後する大人たちが決めたことだ。とやかく言えない。とやかく言うことではない。それでも、現実感がないのである。和牛が、解散するのか?

 2016、17、18年、和牛は『M-1グランプリ』(テレビ朝日系)で3年連続準優勝している。ファイナルステージで、審査員の松本人志は3回とも和牛の優勝に投票した。松ちゃんに言わせれば、和牛は『M-1』のスリータイムスチャンピオンだ。

 19年、和牛は『M-1』準決勝で蹴られ、敗者復活を勝ち抜いて暫定3位に滑り込むも、10番手出番のぺこぱにまくられて敗退した。あのとき私は「痛快だ」と感じたんだ。ニュースターぺこぱ、ようこそ。和牛を叩いたんだ、自信を持っていけ。和牛はあのとき、現役の『M-1』戦士でありながら、すでに新参たちの壁として立ちはだかる存在になっていた。