「大赤字ブランド」を生き返らせたPSA

新たな買い手として名乗りでたのは、Peugeot(プジョー)やCitroen(シトロエン)、DSを傘下に置くグループPSAだ。

2017年8月の買収発表にあたり、GMにとっては「大赤字ブランド」だったOpelとVauxhallを傘下に加えることで、「2020年までに営業上のフリーキャッシュフローを改善すると同時に、2020年までに2%、2026年までに6%の営業利益率を生みだす」と強気なコメントを発表していた(Autcar2017年11月4日付記事 )。

しかしそれから1年後、PSAはそれが単なる希望的観測ではなかったことを証明した。26億ドルで買収した両ブランドは、2018年上半期だけで5.87億ドルの営業利益を計上したのだ。この発表を受け、PSAの株価は14%上がった 。

マネジメント、コスト削減、収益性追求がカギ

OpelとVauxhallの躍進は売上増加に起因するものではない。実は販売台数自体はGMの傘下だった時よりも落ちている。両ブランドの2018年上半期の総販売台数は57.2万台だが、GM傘下にあった前年同期の販売台数は60.9万台だった。

販売台数が増えたからといって必ずしも利益が増えるわけではなく、販売台数が減ったからといって利益が減るものでもない。米ファイナンシャルサービス企業Jefferies のオート・アナリスト、フィリップ・ホウチョイス氏 は、PSAによる「より良いマネジメント、コスト削減、そしてより収益性の高いモデルの販売に焦点を当てた戦略」が大幅な増益につながったと分析している。

同社の発表によると、固定費を約30%削減することに成功したほか、サプライヤーとの価格交渉に加え、自社生産の部品の使用を増やすなど、節減対策を実施した。

ホウチョイス氏 いわく、PSAの功績に貢献したのはカルロス・タバレスCEO だ。フィアット・クライスラー・オートモービルズ やフェラーリのCEOを務めた「カリスマ実業家セルジオ・マルキオンネ氏を彷彿させる何か」を、タバレスCEOは感じさせるという。

対照的に、GMがOpelおよびVauxhall車の販売に用いた戦略は不採算的なもので、「経営者も赤字ブランドの救済を諦めていた」という。マネジメントの姿勢や戦略が勝敗を大きく分けた例だろう。

文・アレン・琴子(英国在住フリーランスライター)/ZUU onlien

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