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前作から続編への橋渡しが首尾よく済んだところで、冒頭でふれたナースステーションのやり取りが描かれる。岡田将生と中井貴一の名コンビぶりを最初から見せられてしまうと、どうしても一方が画面から不在であることに物足りなさを感じてしまう。
コンビなのだから、ふたりでひとつのバディ。看護部長・愛川塔子(寺島しのぶ)が静に早く帰ってきてくれと連絡しているのだが、当の本人はニューヨーク暮らしを満喫しているからとはぐらかす。ここはひとまず歩のソロ活動が中心になるのか。と思ったら、きたきた静が割とすぐ再登場する。
帰国した歩が入ったのがおむすび屋だった。店名が「脈屋」。前の病院寮で寮母をしていた土井たま子(池谷のぶえ)が店員として働いている。
夜になってまた訪れた歩がたま子と話していると、画面の外から美しい名調子の声が聞こえる。厨房の奥から包丁を持った静がでてくる。歩が絶叫する。実はこの店は静が経営している。ちゃーんと帰国していたのだ。
◆東映ヤクザ映画仕込みの中井貴一
せっかく再会したのに、また口喧嘩。静は毎回「かのフローレンス・ナイチンゲールはこう言っています」を枕詞にナイチンゲールの名句を嫌みっぽく引用する。細部にまで配慮がいきとどいた言葉の名手である静だが、ときにドスを効かせた声色を使って、相手に釘を刺す瞬間がある。
脈屋の再会場面では「患者を追い返すナースは、ガチグソナースじゃ」とにらみをきかせる。どうして美しく晴れやかな話者である静さんがこんな声色になるのか。それが九鬼静という人物のユニークなキャラクター設定なのだが、美しい言葉とドスの効いた声色の使い分けがまったく矛盾なく共存するのは、中井貴一ならではの演技である。