監督が、「撮ってる素材はたくさんあるから、あと何日か追わせてくれれば映画になる」と。

 断ってたんですけど、「絶対成功させます!」と監督が。僕も「じゃあ、ファンの方が観て喜んでくれるような映画ができるのであれば、お任せします」と、最後はその情熱に負けました。

<※TBSドキュメンタリー映画祭2023では、2年間を追ったドキュメンタリー『オートレーサー森且行 約束のオーバルへ』が上映された。>

――本作は、さらに1年間の密着を加えて再編集された劇場版です。

森:映画祭のときは、僕がまだ復帰できなかったんです。「復帰戦まで追わせてください」と言われて、「自分のせいで復帰戦まで追った映像が入らなかったんだから、しょうがないな」と。

 でも今回は、映画館で公開されるんですよね。5~6か所でやるだけかと思っていたら、全国60か所を超えてるって。逆に心配です(笑)

◆自分が知らなかった周囲の様子を観られて嬉しかった

森且行さん
――完成した劇場版をご覧になった感想は?

森:自分のリハビリの様子を見ても、特に何も思わないんです。自分自身がやってきたことだし。でも自分が知らなかった部分、復帰戦に向かう途中の、お世話になっている担当の石井(桂輔)先生の姿や、兄貴や同期のインタビューを観て、めちゃくちゃ嬉しくなりました。

――石井先生も、心から喜んでいるのが伝わってきました。

森:あんな大人の人がぴょんぴょん飛び跳ねてね。しかも石井先生、イケメンでしょ(笑)。

 本当に僕の辛い時期に一緒に戦ってくれた先生だからこそ、ああいう涙も流してくれたんだろうなって。

 これまで5回手術してるんだけど、石井先生は、背骨を担当してくれていて、背骨のボルトを抜く手術を含めて3回やってくれてるんです。

 いまもしょっちゅうレースを観に来てくれてるんですけど、僕がレースに戻る前のリハビリ中もひとりで観に行って、リハビリに足りない部分を考えたりしてくれて。本当に感謝しかないです。