確定申告で還付があっても得になるとは限らない

源泉徴収ありの特定口座でも、確定申告を行うことで源泉徴収されていた税が還付されることがあり、この点だけ見ればお得だといえる。しかし、確定申告をせずに源泉徴収で課税関係を終了していれば利益が合計所得金額に含まれないのに対し、確定申告をするとその人の合計所得金額に反映されてしまう点には重々気を付けたい。合計所得金額が高いとさまざまなデメリットがある。

合計所得金額に反映されることで世帯の納税額が多くなる身近な例は、配偶者控除や配偶者特別控除を受けるときだ。これらの控除を受けるには、その配偶者の合計所得金額に制限がある。夫が主な給与所得者であった場合、配偶者(妻)の合計所得金額(収入から給与所得控除を差し引いたもの)が配偶者控除は38万円以下、それを超えたときに適用される配偶者特別控除では123万円以下ならば夫に所得控除が認められる(配偶者特別控除は配偶者の合計所得金額が83万円を超えると段階的に減っていく)。配偶者が確定申告をすると株式等での利益も配偶者の合計所得金額に含まれてしまい、夫の所得控除が減るかなくなるかする恐れがある。

配偶者控除と配偶者特別控除は2018年から大きく制度が変わっている。最新の制度を踏まえ、所得控除が減ることで世帯として増税となる金額と、配偶者本人が投資で得た利益にかかる所得税の還付を受ける金額とを比較して損得を検討する必要がある。

また、納税者本人の合計所得金額が3000万円を超えてしまうと、住宅ローン減税やマイホームを売却して損失が出た場合の救済措置が受けられないことがある。所得が高い人は意識しておこう。

なお合計所得金額とは繰越控除で赤字を差し引く前の金額を指すことにも注意が必要だ。

以上は所得税(国税)の話だが、合計所得金額が地方税や地方公共団体のサービスに影響を与えることがある。サラリーマンにはあまり縁がないが国民健康保険の保険料などが合計所得金額に影響される。また、地方税が非課税となるかどうかの判定にも合計所得金額が用いられる。

確定申告をすると、合計所得金額に金融取引の利益が合算された状態で地方公共団体に届いてしまう。しかし、2017年から、配当所得については、所得税の確定申告書とは別に個人住民税の申告書が地方公共団体に提出された場合にはそちらも勘案して決定することとされている。所得税で確定申告しても地方税で申告不要とすることも可能だ。ただ、具体的な取扱いは地方公共団体によって異なるので問い合わせておこう。