何を見せられてきたんだろう、と思うわけですよ。マキちゃんのお墓参りに行きたいと言って、泣いたアユ。「マキちゃんのことは私だって悲しい」と涙ながらにアユに食って掛かった結ちゃん(橋本)。あのシーンを「忘れろ」ということなんでしょうか。アユはいいとしても、あんだけ泣いて怒鳴り散らしたんだから、結ちゃんだけでもマキちゃんのお墓参りに、真っ先に行きなさいよ。震災を語るためにわざわざ神戸に舞台を移したのに、姉妹2人に大きな傷を残した「マキちゃんの死」を、なかったことにするつもりなのかと思っちゃうんですよ。つじつまが合ってないんです。
結ちゃんは結ちゃんで「バイトしよっかな」とか言い出して、パパママに「慣れるまで学業に専念したら?」って言われたら「学業って(笑)大げさな(笑笑)」という態度ですし、授業初日にはギャル盛りメイクにネイルくっつけて通学するわけですが、これはマジメちゃんに「なめとんか」と言われるための展開作りでしょうから、まあいいや。鼻にはつくけどな。
■それを見せられるんか
結ちゃんが、お友達にカッパと付き合っていることを自慢した上で「うちが栄養士になって支えたいなぁ」とか言いながらポヤーンとするシーンがあります。その後、神戸での初デートでカッパが「ヘアサロン ヨネダ」を急襲し、パパママに「結婚を前提にお付き合いをさせていただいております」と宣言する。
そういうのを見せられるんか、とゲンナリしちゃうんですよ。そんな簡単にゴールを設定してくれるなよ、と。
やっぱりこう、長いドラマを見るということは、その主人公の自己実現や成功、あるいは目覚めのようなゴールを期待するわけです。エリート野球選手の妻になって食事面をサポートすることだって、全然ダメな夢じゃないけど、それは勝手にやってよドラマにすることじゃないだろと思うし、仮に今後「最初はただカッパを支えたいだけだったけど、もっと多くの人を」みたいなことを言い出すんだとしたら、ドラマの側から「野球選手の妻になって栄養面からサポートしている女性」という存在の価値を貶めることになる。それを避けるためには、今度はカッパに再起不能のケガをさせて「今まで勉強してきたことを世間に役立てたい」とするしかない。また物語のフックのために登場人物を痛めつけることになる。