浜岡が幼なじみの江波に“告白”したのは、自身が管理するパパ活サイトで利用するためで、何の愛情もなかった。九条の言葉に耳を貸さない江波だったが、内心では浜岡に自分への気持ちがないことに気づいていた。そして九条は、浜岡が自分の“計画”を意気揚々と語る盗聴音声を江波に見せる。現実から目を背けることで「居場所」を確保できると信じていた江波は、向き合いたくなかった事実を突きつけられ、学校を飛び出してしまう。

 そんな江波を救ったのは、江波に想いを寄せていたクラスメイトの栖原竜太郎(窪塚愛流)だった。栖原もまた、江波に傷害事件を起こさせた浜岡に恨みを抱き、退院直後の浜岡を襲うという“未来”を九条から伝えられ、バカにするものの、九条から本当は浜岡が何をしようとしているのか気づいているが、見て見ぬふりをしているだけではと痛いところを突かれてしまう。そして、愛情を求めている江波を救えるのは教師である自分ではなく、「本当に想いのある人だけ」という九条の言葉を受けて、栖原は行動を起こすことを決意したのだった。

 栖原が江波に自分の想いを伝え、傷ついた江波に寄り添おうとする姿は素晴らしかった。特に、栖原演じる窪塚愛流の飄々としながらも内なる情熱がにじみ出るさまは、父・窪塚洋介を彷彿とさせた。「ねえよ! 居場所なんて。どっかの誰かに安住の場所を求めても、嫌われたら終わり」「でもさぁ、別になくたってよくない? 生きて立ってるだけで十分じゃん。ってか、立ってるだけの自分を誇れよ。だってその場所に誰かが来るかもしんねぇし」「なんでそんな、お揃いでいることばっか求めんの? 誰かと同じであることを必要以上に求めなくたっていいんだよ」など、“窪塚語録”と紹介されても納得してしまうようなセリフを、“窪塚調”と呼びたくなる言い回しで語っており、配役の妙が感じられた場面だった。

 生徒を救うのは教師だけではない。クライマックスで映し出された栖原と江波の絆から、3年D組の再興は、九条がどれだけ生徒の考え方を変えられるかにかかっていることを認識させられる放送回となった。今回のキーワードは「見て見ぬフリ」の罪深さだが、ずっとクラス内いじめを「見て見ぬフリ」されてきた鵜久森叶(芦田愛菜)が九条を避けようとする江波に声をかけ、「本当は江波さんも感じてるんじゃないかな。“先生に呼ばれた意味”みたいなもの。見ないフリしてる何かがあるんじゃないかなって」「今この選択だけは逃げないほうがいいと思う」と伝えたことが、江波の運命をよい方向へと変えたきっかけになっていたことも、今回のポイントだ。江波と栖原の行動は九条が直接働きかけたことが大きいが、鵜久森については九条のあずかり知らぬところでのアシストだった。九条派が増えることで、こうした好循環も増えていくかもしれない。