香港ノワール風ハードボイルドサスペンスドラマ『潜入兄妹』(日本テレビ系)も第7話。毎回、物語が途中で終わってしまうような「最悪だ……」なバッドエンドのシチュエーションを用意しておいて、そのピンチをなんとかかんとか脱するというフォーマットに徹しつつ、仁義や絆、暴力と旨そうな飯なんかのデコレーションで彩られた世界観がなんともステキです。
今回は、「ハコの中にいる内通者をあぶり出せ」というお話。内通者が誰だかわかりませんが、きっと事情があるんでしょう。振り返ります。
■今週もとりあえず「最悪」を脱出
キイチ(竜星涼)とユキ(八木莉可子)の潜入兄妹を潜入させた当の本人である入間刑事(及川光博)が巨大詐欺組織「幻獣」に捉えられ、キイチは入間刑事を「殺せ」と命じられてしまいます。
目の前には後ろ手に縛られた入間刑事、手には組織の始末屋・櫛田(フェルナンデス直行)から渡されたナイフ。もちろんキイチは入間刑事を殺さなければ自分が殺されてしまいますが、そんなことはできるわけありません。ユキも見てるし。はい、最悪です。
ここで機転を利かせたキイチ、ナイフを捨てて「殴り殺す」と宣言。無防備な入間刑事をタコ殴りにします。殴られてすっ飛んだ入間のメガネを踏み潰すなど、まあまあやりすぎてる。そしてある程度殴ったところでそこらへんにGPS発信器を床に転がし、居場所が割れてるので警察が来るということで、一同は入間を残して撤収することに。
実は入間が拉致される寸前にキイチに電話をかけ、スピーカーにして拉致されることを教えていたんですね。そこでユキが自前でGPS発信器を用意していくことを提案し、あらかじめ警察を現場に呼んでいた。
このドラマにおける、いつもの脱ピンチパターンです。どうしようもなく、逃げ場のない最悪の事態だと思わせておいて、普通に考えてあり得ない脱出方法でなんとか脱出する。直後に「実はこんな準備をしていたんですよ」という情報を後出しして、説得力を付加する。これだと、トラブルの時点では本当に脱出方法がないように思えますので、ワクワクしちゃうわけです。細かく見れば偶然のタイミングに頼っていたりとか、ツッコミどころもあるんですが、そのへんはシーンの強さと展開のスピードで潰していく。キイチが殴り始めた瞬間、ああこれは本当にボコにされるんだと悟りつつ殴られ続けた入間刑事、カッコよかったですね。ミッチーを「人間とダイヤモンドのハーフ」だと言ったのは芸人のカズレーザーだったでしょうか。そのミッチーがボコボコにされているわけですから、こういうのをハードボイルドというんだよね。