はてさて朝ドラ『おむすび』(NHK総合)を見る楽しみはいったい、どこに隠れているのだろう?

『おむすび』© NHK
『おむすび』© NHK
 熱血な球児を演じる佐野勇斗にぎゅぎゅっと凝縮されているのだと言い切りたい。それだけ本作の佐野には不思議な魅力があり、佐野勇斗ファンではない人でもたぶん、彼の微動に注目する視点ならかなり楽しめると思うからである。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、佐野勇斗の微動を楽しむドラマとしての本作を解説する。

◆画面の細部に注目すると

 どうも視聴率のことやら、なんやらで不評続きの『おむすび』だけれど、ギャル平成史を描く物語はひとまず抜きにして、画面の細部に注目するとかなり面白いところがあったりする。

 第4週第20回、主人公・米田結(橋本環奈)は、ギャルサークル「博多ギャル連合」通称ハギャレンのメンバーとして、地元で開催された糸島フェスティバルでパラパラを披露した。パフォーマンス自体は盛り上がったが、それをけじめと決めた結はハギャレンを脱退する。

 主な理由は、ハギャレンの元カリスマ総代であり、家族に迷惑ばかりかけてきた姉・米田歩(仲里依紗)のようにはなりたくなかったから。高校の書道部も退部した結は、家業である農家の仕事を手伝うようになる。

◆直接介入してくる人物

『おむすび』© NHK
 端から見ると、献身的な孝行娘に写るが、実際のところは夢をあきらめた逃避でしかない。ほんとうに農業をやりたいわけではないからである。そのことを誰よりわかっている家族たちも、複雑な眼差しで結を見守るしかない。

 家族以外の人間で唯一ひとり、直接介入してくる人物がいる。他校のエース球児で甲子園出場を目指している四ツ木翔也(佐野勇斗)である。彼はことあるごとに結の元をたずね、熱血な視線を向ける。

 大きな夢を持つ翔也と家業に根を張ろうとする結。将来へのベクトルがまったく逆のふたりだが、翔也から一球入魂されることで、結は再び夢の方へと向きを変えるのだ。