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映画『ぼくとパパ、約束の週末』が11月15日(金)公開。今作は自閉症と診断されている少年ジェイソンと、その家族の姿を赤裸々につづった感動作だ。

『ぼくとパパ、約束の週末』あらすじ

特別な感性を持つジェイソンは、幼い頃から自閉症と診断されていた。生活に独自のルーティンとルールがあり、それらが守られないとパニックを起こしてしまう。ある日、クラスメイトから好きなサッカーチームを聞かれたのに答えることができなかったジェイソンは、56チームぜんぶを自分の目で見て好きなチームを決めたいと家族の前で言い出す。

こうして、ドイツ中のスタジアムを巡る約束をしたパパとの週末の週末の旅が始まった。強いこだわりを持つジェイソンは、果たして推しチームを見つけることが出来るのか?

レビュー本文

理解が何より大切

他の人々と同等か、むしろそれ以上に頭の回転が速く、今作のジェイソンのように勉強や知識の記憶は得意なこともあるため、一見皆と同じように見えることも多いのが自閉症。彼らを一目見て“障がいに苦しんでいるかもしれない”と瞬時に想像を膨らませる人はそう多くはないだろう。

人々は、“少し異なる人間”を攻撃しがち。外見や言動に明らかな差があれば配慮もされやすいかもしれないが、“ほかの子どもと同じに見えるのにたまに違った言動をする”となると、途端に見下したりバカにしたりする対象としてみなしてしまう人間がいる。特に、まだまだ成長途中の子どもの中では、そういった人間が“変なヤツ”扱いされやすい傾向にもあろう。ジェイソンも“一見同じ”だからこそ、「なぜできないんだ」と強く当たられてしまう。

ジェイソンはすべてに白黒をつけたがるが、人間の個性も、人々の考えや価値観も、0か100かでは測れないことが多い。ジェイソンも言ってしまえば「比較的、ほかの人々と同じに見えやすいが、自閉症の性質は備えている」というグラデーションの中にいるように見受けられる。そのような部分にいて他の人の“当たり前”を強いられる人間の方が、重度の特徴を持つ人間より苦労する一面もあるのではないだろうか。

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「皆が優しく、他人に攻撃しない」という世界になるのは理想だし、それを口で言うのは簡単だが、さまざまな人間がいる世の中でそれが簡単に実現するものではないことは明らか。だからこそ、意地悪な人間、了見の狭い人間もいることを受け入れ、いかに攻撃が生まれないようにできるかを考えることも大切だ。そう考えると、“攻撃”の根底には“不理解”があることが多い。“わからない”から攻撃してくる層がいるということだ。

そういった層は、理解さえさせられれば攻撃を止めることもある。だからこそ、説明すること、理解してもらう機会を増やすこと、人の説明をしっかり受け止めることの重要性が今作でも描かれている。そして、この映画が撮られ、多くの人に観られることもまた、世の理解を助けることにつながるだろう。今作はそうして「みんな優しくなれ」と綺麗事を述べるのではなく、説明し、理解を得ることで関係を変えていこうとするリアルに即した考えを提示しているところがまたすばらしい。