サイエントロジーとは以前より距離を置いていることもあり、トム・クルーズのハリウッドにおける人気は格別です。『トップガン マーヴェリック』はコロナ禍で何度も劇場公開が延期されながら大ヒットしました。コロナ禍でロックアウトが続いていた期間、配給会社のパラマウントには、Netflixなどの配信会社から高額でのオファーが何度も届いたそうです。ネット配信を断って、劇場で大ヒットさせたことから、トム・クルーズは映画館オーナーたちから「映画界の救世主」ともてはやされました。

 また、予告編ではマーヴェリックのフライトジャケットに貼ってあった日本や台湾の国旗のワッペンが途中で消えるという小さな異変が起きています。これは中国マーケットに対する忖度だったようです。弱体化しつつあるハリウッドにとって、中国の巨大マーケットは喉から手が出るほど欲しいターゲットです。しかし、映画本編ではマーヴェリックのフライトジャケットに変更はありませんでした。チャイナマネーになびかなかったことも、トム・クルーズ人気を高めることになりました。

 内容はないに等しい『トップガン マーヴェリック』は、トム・クルーズという「最後のハリウッドスター」を称賛するための作品だと言っていいでしょう。言い換えれば、オッサン世代が思い描く「理想のおじさん」像の物語でもあります。

 トム・クルーズみたいな人気者になりたいだなんて、露にも思いやしやせん。それでも、自分もやっぱり死ぬまで現役でいたいもんです。ははは、私もバカな人間でございますよ。