物語中盤で、かつてマーヴェリックのライバルだったアイスマン(ヴァル・キルマー)が登場します。海軍大将となったアイスマンですが、重い病気を患っています。実は撮影時のヴァル・キルマー自身が咽頭がんの治療中でした。

 前作『トップガン』の成功で、トップスターにまで瞬く間に駆け上がったトム・クルーズ。一方、ジム・モリソンの伝記映画『ドアーズ』(1991年)や『バットマン フォーエヴァー』(1995年)などに主演するも、トップスターにはなりきれなかったヴァル・キルマー。同時代をそれぞれ全力で生きてきた2人の男が36年ぶりに共演するシーンは、作品の評価とは別に胸に迫るものがあります。

 肝心の若い世代とのジェネレーションギャップをどう埋めていくのかという物語上のキーポイントですが、そこは実にあっさりしています。マーヴェリックと若いルースターたちは特訓の最中、一緒に砂浜でアメフトに興じます。前作のビーチバレーのようなキラキラシーンです。共にスポーツを楽しみ、汗を流せば、それで仲良くなっちゃうという。これはもうトム・クルーズにしか許されない反則技ですよ。

 サングラスをしているマーヴェリックに、自宅まで送ってもらったペニーが「やめてよ、その目つき」という台詞を漏らすシーンもあります。トム・クルーズがニカッと笑うと、みんな「やれやれ、仕方ないなぁ」とトムの意向に従うはめになります。トム・クルーズ=究極の愛されおじさん、と言っていいでしょう。

トム・クルーズがもてはやされた理由

 エド・ハリスらが演じた他のオッサン上官とマーヴェリックとの違いを挙げるのなら、マーヴェリックは現場にこだわり、危険度が高い作戦も自分が率先して引き受けるという点にあります。安全な場所から偉そうに命令だけ下すオッサン上司よりは、やはり信頼できるわけです。CGに頼らず、撮影現場で自らがスタントに挑み続けるトム・クルーズゆえの説得力が、クライマックスの戦闘シーンにも感じられます。