たとえば、第1週第1回冒頭、ドラマ全体の第一声は北村のものだし、画面上に登場してはあの魅力的な仏頂面を印象付ける。それから第2週第7回で、高校のクラスメイトで福岡のギャル連合ハギャレンのメンバーである柚木理沙(田村芽実)が結を自宅まで迎えにくる場面。
結と理沙が自転車を押して出掛けて行くとき、農具をもった聖人が娘の友達がどんな人物なのかと点検するかのように見送る。「ふぅーん」と声をこもして、右から左へ二度見する。この北村の顔と動作を捉えるバストショットがいい。北村有起哉ファンのツボをじんじん刺激する。
第3週第12回では、深酒をする聖人が回想する高校3年生の姿をまさかの北村本人が演じる。ロン毛で若作りした荒技的サービス映像だった。
◆頑固ジジイを演じていた父・北村和夫
第2回の夕食場面で、結の祖父・米田永吉(松平健)と繰り広げる父子の小競り合いも見ものだった。食卓で野球中継を見る永吉が、応援するチームが負ける様子を見てテレビを消せと聖人に指示する。
テレビに一番近い席に座る聖人だが、またつけろと永吉。聖人が文句を言いながら付き合ってやるのだが、画面奥の松平健と画面手前の北村が演じる父子の寸劇的なやり取りが可笑しくてたまらない。
松平が演じる福岡の頑固ジジイ感がややステレオタイプではあるが、北村の仏頂面からコミカルな要素だけをうまく抽出している。そういえば、北村の父・北村和夫が、2001年に放送された朝ドラ『ちゅらさん』で頑固ジジイを演じていたっけ。
◆なになにジジイを演じた『ちゅらさん』
北村和夫が演じたのは、元外科医・島田大心。誰ともコミュニケーションを取らず、自室の扉をぴしゃっと閉めている。沖縄から上京してきた主人公・古波蔵恵里(国仲涼子)は隣人。
第5週第30回で恵里が挨拶回りをする場面がある。扉を少しだけ開けて隙間から顔をだす島田が「なに」と無愛想にふるまう。扉を開けて見せる仏頂面は北村有起哉そっくり。第7週第37回でも「なに」。偏屈な、なになにジジイなのである。