芸事の世界というのは、30代からがやっと勝負の始まりである。その意味で、今年31歳になった仲野太賀は、十分過ぎるくらいの円熟期を迎えている。

 11月5日放送の『徹子の部屋』(テレビ朝日)に出演した彼を見て、それがほんとうに豊かなものだとわかった。これは本人の意に反していることかもしれないが、同放送回は、二世俳優による紛れもない神回だった。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、豊かな神回だと思った『徹子の部屋』仲野太賀出演回を解説する。

◆「二世俳優と言われるのが嫌だった」

『徹子の部屋』に出演するのが夢だったという仲野太賀が、司会の黒柳徹子に呼び込まれてスタジオに登場する。その瞬間から水を得た魚のように、ぴちぴちして映っていた。濃いグレーのタートルネックがとても温かそう。やわらかであざやかなスタイリングもあいまって、これは神回になるなと思った。

 仲野を迎えた黒柳は、序盤から本質的な話題に切り込んだ。「二世俳優と言われるのが嫌だった」と黒柳が話題を提示したのである。俳優デビュー当時、彼は仲野太賀ではなく、「太賀」を名乗っていた。

 彼は父・中野英雄の息子と思われないように、あえて苗字を削り、名前二文字にしたのだ。それでも父は構わずに周囲に息子をどうか宜しくといい回っていた。「それは勘弁してくれ」と仲野太賀は思っていたらしい。

◆年少の父・中野英雄の姿を見て

 でも息子は息子である。今ではそうした当時の葛藤も微笑ましく、「慣れました」と笑う。夢の番組の司会者である黒柳の前では、ひときわ素直になる。スタジオ内にはとってもいい空気感がいきわたっている。