『虎に翼』は主人公・猪爪寅子(伊藤 沙莉)が第1回、第2回で不満げにお見合いに臨み、それを叱る母親・はる(石田ゆり子)の保守性と厳しさが浮かび上がった。逆に庇(かば)った父親・直言(岡部たかし)のやさしさや寛容性が浮かび上がった。

第4回ではるは法律家を志した寅子に対し、自分が女学校へ行かせてもらえなかったこと、家業に役立つ政略結婚をさせられそうになったことを明かす。ここで作品側ははるの生育歴を自然な形で視聴者側に伝えたのである。はるは寅子の法律家志望に猛反対していた。

しかし、第5回で東京地裁判事・桂場等一郎(松山ケンイチ)が寅子の法律家志望を侮辱すると、はるは憤怒。寅子が法律家を目指すことを許す。この時点で寅子の負けず嫌いがはるから受け継がれたことが分かった。

直言の気性と生育歴は第20回からの「共和事件」のエピソードに織り交ぜられていた。エリート銀行員だが、優柔不断。けれど、誰にでも親切。この作品の序盤もほとんどが家族と明律大学女子法科、明律大学法学部の描写に費やされた。

◆『おむすび』母の生育歴が不明で分からないことが多い

『おむすび』はどうかというと、家族に不明点がまだ多い。たとえば、米田結の母親・愛子(麻生久美子)の気性と生育歴である。

第10回、深夜徘徊で警察に補導されたハギャレン(博多ギャル連合)の真島瑠梨(みりちゃむ)の身元引受人になったことなどで、愛子がやたら物わかりのいい人だということは分かった。

第14回で愛子は義母の佳代(宮崎美子)に対し、ハギャレンが白眼視されることについて「外見で判断されちゃうからね。私がそうだったし」と漏らす。佳代は「名古屋の元スケバンやもんね」と応えた。その言葉に愛子は「やめてよ、そんな昔の話」と照れる。