そうでなければ、「子どもはかわいいけど夫は憎い」と考えて離婚していくはずがない。遺伝子は半々なのだから、夫が憎くなれば子どもに対してもその気持ちが注がれても不思議はない。だが離婚した女性たちのほとんどは、子どもはかわいい、そしてその子どものためにがんばっていかなければと考えるのだ。そして、そういう傾向があるからこそ、夫への罪悪感も薄い。罪悪感を覚える前に、出産する、命を生み出すという重大な決意をしているのかもしれない。
◆托卵妻は、おそらく今後もいなくなることはない
女性の中には、男性を愛することと「この人の子どもがほしい」という気持ちが直結しているタイプが一定数存在すると思う。だから托卵が起こるのではないだろうか。男性を愛することと、その人の子を産むことはまったく別だと考えるなら、「愛しているから子どもがほしい」は成立しない。
DNA鑑定が簡単にはできなかった時代、産まれた子が「おとうさんには似てないね」と言われても、男性たちは「そんなものか」と思うしかなかった。妻を信じるほかなかったのだ。妊娠できない男たちは妻を信じ、産まれた子をかわいがることで妻の信頼を得て、「父親になっていく」ものだった。現代になっても、妻を薄々疑い、「次男は自分の子ではないかもしれない」などと思いながらも、「事実確認はしない、したくない」と言う男性も少なくない。真実を知ることで不幸になるくらいなら、真実など知らないほうがいいのかもしれない。それは個人の考え方によるだろう。
女だから出産という過酷な体験をしなければならない。そうもいえるが逆に、女だからこそ出産の自由と権利をひとりで握っているともいえる。托卵妻は、おそらく今後もいなくなることはない。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。著書に『くまモン力ー人を惹きつける愛と魅力の秘密』がある。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio