この問題についてトランプ前大統領は選挙戦中、政治討論会やメディアの取材に「バイデン政権はヘンリー王子に甘すぎる」「私は王子を守るようなことはしない。彼はエリザベス女王を裏切ったのだから」「(大統領選に勝利すれば)ヘンリー王子を特別扱いはしない」との発言を繰り返した。
ヘリテージ財団が連邦政府を相手取ったヘンリー王子のビザ発給をめぐる裁判で、コロンビア特別区地区裁判所のカール・ニコルズ判事は9月23日、「国民はヘンリー王子の入国記録の開示に強い関心を持っているわけではない」として、非公開のままにするべきだとの判決を言い渡した。
判事は「他の外国人と同様に、ヘンリー王子も自分の在留資格についてプライバシーというものがあり、ヘンリー王子のプライバシーの重要性は国民の関心を上回っている」と説明している。
しかし、トランプ前大統領が大統領選で圧勝したことで、ヘンリー王子に有利に働いた判決の「効力」は事実上、吹き飛んでしまった。
ヘリテージ財団マーガレット・サッチャー・フリーダムセンター所長のナイル・ガーディナー氏は、ヘンリー王子の薬物使用についての広範囲かつ継続的な報道は、ヘンリー王子の入国を許可する際に適切な審査や手続きが行われたのかどうかの疑問を投げかけている、と主張してきたが、トランプ新政権下では、ヘリテージ財団の主張が政界の正論となる。
初当選した2016年と敗れた2020年の過去2回の大統領選と違い、トランプ前大統領は今回、初めて総得票数で相手候補を上回った。その勢いで不法移民の強制送還に真っ先に取り組む。
トランプ前大統領は急ピッチで新政権人事を進めており、11月11日には、早々に国境管理の責任者を決めた。「泣く子も黙る」移民税関捜査局(ICE)の局長代理を務めたトム・ホーマン氏である。トランプ前大統領はホーマン氏に「国境の皇帝」として移民問題の実務のほぼ全権を託す。
ホーマン氏は強制送還の手順として、犯罪者や安全保障上の脅威となる人物から始め、次に犯罪にはかかわっていない不法滞在者に移っていくとしている。