◆モラハラ・DVの加害は“連鎖”するのか

――今回は「加害の連鎖をどう断ち切るか」というテーマが描かれています。今では会社で“仏の鳥羽さん”と慕われる男性の娘・奈月(29歳)が、彼から受けたモラハラが傷になり、大人になっても自身の感情を制御できずに苦しむシーンに心を揺さぶられました。この「加害の連鎖」についてご意見をお聞かせください。

龍:子どもの頃に安心安全な環境で育つことができないと、自分の本心を抑圧した状態がデフォルトになってしまい、大人になっても、自分の本心がどこにあるのかわからないままです。いわば自分の基礎工事がしっかりできないまま、グラグラの状態で社会に出ていくようなものなので、これは本当に不安定で生きづらいんですよね。

親子関係というのは人生最初の「親密で安心な関係」なのに、そこでうまくいかないと、大人になってから恋人などと親密な関係を持とうとしたときに、過度に依存的になってしまったり、逃避的になってしまったりします。とにかく人との距離感が上手く掴めない、自分の子どもにもどう接してあげて良いかわからない。「愛する」って何なのかわからない。そんな状態で子どもを持って育てていくことがどれほど困難かわかりますよね。

自分は絶対に親と同じような親にならない、と決意しているのに、気付いたら親と同じ事を繰り返してしまう。加害の連鎖を断ち切るのって本当に難しいことだと思っています。