でもねー、この演説がまずピンとこないんだ。
「歌舞伎町ウイルス」って呼び方はそもそもドラマが勝手に言い出したことなんだけど、こんな呼び方をするというところにリアリティがない。アメリカ帰りの旅行者が羽田で陽性判定されて勝どきの病院で亡くなってるのに、その日本人第1号の感染者が歌舞伎町のホストだったからって、そのウイルスを「歌舞伎町ウイルス」なんて呼ぶわけないんです。
そんな、誰も呼ぶわけない「歌舞伎町ウイルス」という呼称について、ヨウコさんは「アメリカ帰りの旅行者が羽田で陽性判定されて勝どきの病院で亡くなってるのに、その日本人第1号の感染者が歌舞伎町のホストだったからって、そのウイルスを『歌舞伎町ウイルス』と呼ぶな」と訴える。こんなのは単なるマッチポンプでしかない。
で、医療従事者の待遇改善について「お願いします」「お願いします」と院長と2人でカメラに向かって繰り返し頭を下げるシーンも、「今それ?」って感じなんですよね。リアルを思い出せばあのころ本物の医療従事者たちがメディアで叫んでいたのは「マスクもっとくれ」「ワクチン早く大量にくれ」だったと記憶しているんですが、このドラマでは事前にワクチンやマスクについて肯定も否定もしない中途半端でシニカルな解釈を述べてしまっているので、「コロナ禍」を総括するうえで100%正しいことが「医療従事者の待遇を改善せよ」しかなくなってる。
クライマックスの演説シーンで、そのメッセージの「正しさ」を担保に取ろうとしているのもダサいし、大して言いたいこともないのに「クライマックスは演説だろ」って方法論を優先してこのシーンを持ってきたのもダサかった。
ここに明確なメッセージがなかったことにより、「コロナ禍」をラストの展開に持ってきたことも、「ヨウコさんの無免許を発覚させて『まごころ』を去らせる」という段取りのためだったように見えてくる。あとは「ソープやヘルスが隔離に使える」という、おもしろアイディアを見せびらかすためか。いずれにしろ、たくさんの人が死んで、たくさんの人がすごく人生を狂わせたモチーフがここに登場した必然性は感じませんでした。