さらに、同関係者は今回の那須川の試合を見て、現在、那須川の専属トレーナーを務めている粟生(あおう)隆寛との共通点を思い浮かべたという。
「当時の粟生も、史上初のアマ高校6冠という実績を引っ提げてデビューしたスーパールーキーでしたが、やはり“倒せない時期”というのがあったんです。14戦目の日本タイトル獲得から3試合連続で不完全燃焼の判定勝利に終わり、次戦の榎洋之選手(当時OPBF東洋太平洋王者)との試合では12ラウンド引き分け判定に終わっている。相手の耐久力が上がったことと、スピードに差がありすぎて試合がかみ合わなかったことで、精彩を欠いたように見えていたんですね。ところが榎戦直後に出場した世界タイトルマッチでは、水を得た魚のように躍動しました。ボクシングの世界では、相手のレベルが上がることで一気に試合がかみ合い、実力が発揮される例も少なくないんです」(同)
那須川の場合、1戦目が日本ランカー、2戦目がメキシコ王者と、スーパールーキーだった粟生トレーナーが14戦目以降に対戦していたランクの相手と、デビューから連戦していることになる。しかも、その相手をまったく問題にしない試合ぶりを見せているのだ。
「だから那須川選手も、あと1つ2つレベルの高い相手になれば、ノックアウトを量産するボクサーに化ける可能性も十分あります。例えば同じキックボクシング出身で現在那須川と同じスーパーバンタムの東洋王者である武居由樹選手なんて、面白いんじゃないですか?」(同)
試合後の会見で左手を負傷していたことも明かしている那須川。まずはケガの完治を祈りつつ、今後のキャリアに期待したいところだ。
(文=新越谷ノリヲ)