ブレーク前のともしげといえば、他人に不幸があれば指をさして爆笑し(特に芸人の解散が大好物)、強すぎる性欲によって露骨な下ネタ発言が止まらなくなり、やりたくないことがあれば舞台上でも関係なく不機嫌になり、それを強制されれば人目をはばからず泣き出すという、トガリともまた違う、純粋なスケベと性格の悪さと自己中を隠そうとしない人間だったのだ。
そういった、ともしげの“本性”が、ブレーク後にはほとんど見られなくなっている。ただ『M-1』の日そのままの、可愛いともしげがずっとテレビに映っている。
多忙なスケジュールによって余計なことを考える暇がなくなったのか、『M-1』の半年後には結婚し、今年春に子どもが生まれたことも関係しているだろう。そして何よりテレビでのともしげの振る舞いには、芝による強烈なディレクションが入っていることは想像に難くない。
どうあれ、『M-1』より10kg近く太ったともしげは身も心も丸くなり、今日も愛嬌を振りまいている。あげく、クールの権化だった芝までニコニコとよく笑うようになった。極端なルックスの対比も、芝の手堅い技術も、ともしげのタレント性も、すべてが良い方向に回り始めた今のモグライダーは、無敵に見える。
だが、時おり感じてしまうのだ。あのころの強烈に性格の悪いともしげも、それはそれでハチャメチャに面白かったな、と。
(文=新越谷ノリヲ)