◆現代の映画体験最大の贅沢
シリーズ第3作『キングダム 運命の炎』(2023年)では、敵国・趙に攻め込まれた秦国がピンチになる。そこへ召喚されたのが、王騎。呼び寄せたのは、秦軍総司令・昌平君(玉木宏)。
玉木宏が出演する配信ドラマ『沈黙の艦隊 シーズン1~東京湾大海戦~』(Amazon Prime Video、2024年)では、原子力潜水艦を乗っ取り、独立国家を宣言する艦長・海江田四郎を大沢が演じ、主演と製作を兼務した。
海江田の元部下・深町洋を玉木が演じ、ふたりとも海上自衛隊の制服がよく似合う。力強い役柄のときにあえてさわやかな要素を導入するのが、制服の白色だった。そんな共演経験があるふたりが、秦国軍の中枢を担う役ですでに手合わせしていたのだった。
熱い共演相手(玉木)から呼び込まれた大沢のクリアな発声が、咸陽の宮殿中に響く。広い空間内に行き渡るこの神秘的な残響音を映画館で聞くことは、現代の映画体験最大の贅沢のひとつ。
1927年に『ジャズ・シンガー』が公開され、有声映画の時代が到来して以来、映画芸術は音とともに深化した。オーソン・ウェルズによる『市民ケーン』(1941年)は、大空間に俳優の声が響く画期的な作品だったが、そうした映画の音響的歴史を王騎役の大沢からも噛みしめられるのだ。