◆どこに行き着くかはわからない
今は妻が何時に帰宅しているのか、ノブヒコさんはほとんど知らない。顔を合わせれば話すが、ときには数日、顔を合わせないこともある。ただ、お互いに若くはない。どこかで倒れていたら困るので、1日1回はSNSのメッセージでやりとりをする。旅行などで家をあけるときも連絡はする。同居の基本的なところだけはおさえている。
「こんなことになるとは思いもしませんでしたが、こういう生活を始めて5ヶ月ほど。今のところ、妻は解放された喜びに満ちているようです。私は、うーん、どうでしょうね。ときには妻の手料理が食べたいと思うこともありますね。いつかもう少し歩み寄って、そんな日がくればいいんですが……」
妻の離婚宣言から生活が激変したノブヒコさんだが、妻はずっと望んでいた離婚を遂行できなくてよかったのだろうか。そう聞くと、そこは現実的に考えたようだと彼は言う。
この先、どういう生活が待っているのか、やはり離婚に傾くのか、あるいはまた一般的な夫婦関係に戻るのか、それはまだわからない。ただ、結婚26年にして、「初めて顔をつきあわせて真剣に話した日々」を経たのは、ふたりにとってよかったのかもしれない。
<文/亀山早苗>
【亀山早苗】
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。Twitter:@viofatalevio