2020年の離婚件数は19万3253組。2002年をピークに減少傾向にあるが、20年以上同居した「熟年離婚」が21.5%と、割合が過去最高となったと厚生労働省が「令和4年度 離婚に関する統計の概況」として8月末に発表した。
熟年離婚の特徴は、女性側の申し出が多いこと。男性は「青天の霹靂(へきれき)」と受け止めがちなこと。つまり、「いい年をして離婚したくない。そんなことはあり得ない」と思っている男性と、「子どもが巣立ったから、これからは私の人生を取り戻したい」と考える女性との間に、大きな認識の違いがあるわけだ。
◆「仲良し夫婦」だと思っていたのに
「びっくりしました。下の子が大学を卒業して就職、配属先が遠方だったため引っ越していったのが今年の春。その日、『これでオレたちもふたりきりになったな』としみじみ言ったら、妻が離婚届を差し出したんです。この日を待っていたの、と」
硬い表情のままそう言うのは、ノブヒコさん(55歳)だ。結婚して26年。もともと同じ会社で働いていた4歳年下の妻との間にふたりの子がいる。年子を抱えて妻は退職。一時期、専業主婦となったが、数年後に知り合いのつてを頼って就職し、以来、フルタイムで働いてきた。
「私も協力してきたつもりだったけど、実際には子どものことは妻任せでしたね。ふたりとも女の子だったから、妻のほうが気持ちをわかってやれるんじゃないかとも思っていました。
思えば、娘たちが受験で真剣に悩んでいるときも『女の子だから、まあ、そんなに突き詰めて人生を考えなくても、結婚すればなんとかなるだろう』と言って、3人に総スカンを食ったことがありました。あの頃から、妻も娘も私のことを相談できない相手だと思うようになったのかもしれません。
あれは私もいけなかったと反省しているし、3人にも謝ったんですけど……」
妻との関係がよくないと思ったことはなかった。娘たちが大きくなってからは、夫婦ふたりで映画を見に行ったり、土曜日はブランチと称して近所のカフェに出かけたりもした。近所の人からも「仲良し夫婦」と見られていたはずだとノブヒコさんは言う。