◆子どもにポルノを見せることも性的虐待
――こうした“事件”が起きてしまった際、“加害者の”子どもや保護者にはどのように対応をするべきなのでしょうか。子どもに責任を負わせることはできませんが……。
木附「その子の親がどこまで話してくれるかはわかりませんが、家庭環境についてヒアリングが必要だと思います。というのも、加害者の男の子もある種の性被害を受けている可能性を感じるからです。それを何らかの形で表現しているのではないかという印象を受けました。
子どもが性に興味を持つようになり、ごっこ遊びをしたりということは健全な発達の中でありますよね。おもちゃの聴診器を持って、お腹を出してソフトなお医者さんごっことか。でも、今回の加害者の男の子の行動は、明らかに自然な発達の中では生まれない内容です。これは周りの人間、きょうだいなのか親なのかわかりませんが、年上の誰かに影響を受けています。
たとえ子どもに直接触らなくても、子どもの見える場所にポルノなどを置いたり、性的な行為を見せたりすることも、性的虐待です。子どもはいけないものだとわかっていても好奇心から見てしまい、その内容から、個人的な問題を抱えてしまうことになります」
◆万一のことが起こったらどうすればいいの?
――今回の話は30年以上前ですが、もし今、木附さんのところにゆっぺさんのようなケースの相談が来たらどう対応し、保護者にどんなアドバイスをしますか?
木附「性被害に遭った子どもに話をしてもらうことは非常に難しく、残酷なことです。警察に子どもを連れて行けば事情聴取で二次被害、三次被害が起きかねないので、そういった事態は何とか避けたいですね。保護者と一緒に、子どものケアを最優先に、どうしたら子どもが安心・安全だと感じてくれるかを第一に考えます。
親御さんからは『気づかなくてごめんね。言ってくれてありがとう。これからはずっと味方だから、1人で頑張らなくていいよ』と子どもに伝えてあげて欲しいです。その上で、外部からできる精神面のケアとしては、幼い子どもの場合は(会話をする)カウンセリングは難しいでしょうから、言葉を用いない心理療法、たとえば箱庭療法などを行うと思います。
しばらくは、他人のいる場所自体が怖いと思うんです。保育園は転園させると思いますが、新しい園にも、無理にすぐ行かせなくていいと思います。その子が安心・安全と思えるのを待ちます」
【ゆっぺ】
趣味はお菓子作りと絵を描くこと。娘2人を育てながら「ゆっぺのゆる漫画ブログ」の管理人として「なんで言わないの?」をはじめ多数の漫画を発表。
【木附千晶】
臨床心理士。「CAFIC(ケフィック) 子ども・おとな・家族の総合相談 池袋カウンセリングルーム」主宰。子どもの権利条約日本(CRC日本)『子どもの権利モニター』編集長。共著書に『子どもの力を伸ばす 子どもの権利条約ハンドブック』など。著書に『迷子のミーちゃん~地域猫と商店街再生のものがたり~』、『いつかくるペットの死にどう向き合うか~16歳の愛犬を亡くした心理カウンセラーが考えるペットロス~』など。
<マンガ/ゆっぺ 文/千葉こころ コメント/木附千晶 取材/女子SPA!編集部>