◆救いを求めて、あがく人々を演じる俳優陣の、圧倒的な“魂の演技”
ストーリーやキャラクターを超え、その演技そのものに魅せられ涙が止まらなくなることがある。
今年3月に開催された米アカデミー賞で主演男優賞に輝いたブレンダン・フレイザー。今作での彼の演技は鳥肌が立つほどに真に迫っていて繊細で、思い出すたびに胸がぎゅっと締めつけられる。
4時間かけた特殊メイクと45kgのボディスーツによって作り出された272kgの巨体は、動きが抑制されているからこそ手を伸ばすときの切実さったらなくて、穏やかな語り口や痛みの浮かぶ澄んだ瞳、哀しげな佇(たたず)まいに心をわし掴みにされた。
セクハラを受け、うつ状態になったことをきっかけに表舞台から長く姿を消さざるを得なかった彼だからこそ演じられたのであろう、魂の演技だった。