◆気がつけば30代前半に、報われない生活に嫌気
知名度が上がる喜びと、それに反比例する彼との心の距離。しかし、それでも加奈さんはそんな彼のための売り込みを今まで以上に一生懸命取り組みました。
「駄目な部分もありましたが、それでも彼の演奏は好きでしたし、自分が選んだ彼なのだから自分が責任をもって尽くさなければと思っていた節もありました」
ただ、そんな日々を繰り返すうちに気がつけば加奈さんは30代前半に。ある日の夜、久しぶりに同級生の友人から電話があり、秋に結婚するとの連絡を受けた加奈さん。彼女とは仲がよかったらしく、心から祝福の言葉を伝えたそう。
「なんか、ふと思ったんです。自分はこのままでいいのだろうかって。ファンがそこそこ増えたとはといっても彼は音楽で生活はできていませんでし、しかも最近は一緒にいる時間もほぼないに等しいような状況で、そんな彼も素行がよくないですし……」
報われない生活に不意に嫌気がさした加奈さんは、最後に売り込みに行ったプロダクションで差し出されたプロデューサーの名刺に「さようなら」とだけ書いて、それを彼のお気に入りなギターのフレットにはさんで部屋を後にしたそう。