◆夫を治したくて、自分が壊れていく

「こんな人じゃなかった」。病によって夫の言動が変化し、はては暴力までふるうようになった時、妻の彩原ゆずさんは何度もそう思いました。心に浮かぶのは、かつてやさしかった夫の姿。最初は献身的に尽くすゆずさんですが、次第に夫の病状はエスカレート。買物依存、風俗通い。クレジットカードの明細書や風俗店のポイントカードを目にするたび、ゆずさん自身も壊れていきました。

 子供がいるからと耐えていても、ふいに涙は流れ、自傷行為にまで及んでしまうのです。このあたりは読んでいて胸が詰まります。ゆずさんは生真面目で愛情深く、責任感の強い女性なのでしょう。夫の病を治したいと切望すればするほど、ふがいない自分にも怒りがわいてくるのかもしれません。

 ご自身のメンタルに不安を覚えたゆずさんは、保健所を訪ねます。カウンセラーや義母や母、かつての同級生とふれあううちに、自分の幸せについて考えるようになるのです。