◆子どもを可愛がっていると蘇る記憶

――子育て中に虐待されたことがフラッシュバックすると描かれていましたが、どんなきっかけで記憶が蘇ることがあったのでしょうか?

あらいぴろよさん(以下、あらい):自分が子どもに優しくしているときが一番多かったです。私は親にそんな風に扱われたことがないので「どうして私は愛されなかったのか?」と疑問が浮かぶ形でフラッシュバックがありました。

――優しくしているとき、息子さんに嫉妬してしまうと描かれていました。

あらい:息子のことが純粋に羨ましかったです。でもこの感情が嫉妬であることになかなか気付けませんでした。

――よそのお子さんが優しくされているのを見て、羨ましいと思ったことはあるのでしょうか?

あらい:よその親子が仲良くしている様子は温かい気持ちで見ることができていました。自分がよその子と接するときは、何の責任もないせいか、純粋に可愛がることができていたと思います。「小さな子が羨ましい」という思いは、自分の子どもが生まれて初めて気づいた感覚でした。

――子育てする中でイライラが募っていった原因はなんだと思いますか?

あらい:虐待のフラッシュバックがある中、息子が生まれてすぐ実家の父の癌・愛人問題が発覚し、母を支えないといけない状態になりました。産後うつになりやすい時期だったのに、余計なものを抱えてストレスが多かったと思います。

――あらいさんが子どもを持つことを決心できたのはなぜだったのでしょうか?

あらい:あんな家庭で育ったせいか、“家族”というものに強い憧れはありました。夫とは交際期間を含めて5年間一緒にいて、その間に愛情表現の仕方が分からなくて理不尽な接し方をしてしまったこともあったのですが、2人で話し合いを重ねたことで私も落ち着いていきました。年齢的なことを考えたのと「ここまでやってこれたから子どもを産んでも大丈夫かな」と思っていました。