◆支え合ってきた2人の兄の存在

ーー本書では、あらいさんが2人のお兄さんと支え合っている様子が印象的でした。しかし同じ兄妹でも親に対する捉え方が違いはあるのでしょうか?

あらい:私たち兄妹にとって、父は分かりやすい「悪」なんです。でも母の「毒」は分かりづらいものでした。私は母と同じ女なので、母と同じライフステージを歩むうちに「母にとって一番大切な存在は父だった」と理解することができました。

 そこに立たなければわからないものがあると思います。でも兄たちが「自分は同じことをしないようにしよう」と警戒しているのは、父がしてきたことだけなんです。その意味では「危ういな」と感じることがありました。

ーー2番目のお兄さんが、「お母さんはすごかった!それに比べてうちの嫁は……」と比べている描写が気になりました。

あらい:実際に2番目の兄は、結婚したばかりの頃は母と奥さんを比べてモラハラっぽい発言をしていたんです。でも奥さんがすごくしっかりした方で「どうしてそういうことを言うの?」と辛抱強く問いかけてくれて、兄は自分を振り返ることができたそうです。「そう言われれば確かに変だな」と考え直したのだと思います。

 それに、子どもが生まれて奥さんの実家に行く機会が増えたことで、他の家族を見ていろいろと学ぶことがあったようです。私は兄の奥さん2人と「嫁同盟」を組んでいて、「兄たちが変だと思ったら教えてね」と様子をみていた時期もありましたが、今は2人とも落ち着いていると思います。