◆ボツになった“幻の武”も存在していた

 そもそも、武というDVモンスターはどのようにして誕生したのか。

「DVする男性をかなりリサーチして、その中で『この要素を入れたらいいんじゃない?』ということを話し合う中で、次第に固まっていきました。直接暴力を振るったり、『生きる価値がない』みたいな暴言を吐いたりなどの一線は越えないように意識しました。そのラインを守りつつ、郁子を名前ではなく『きみ』と呼ぶようにしたり、靴下を脱ぎ散らかしたりなど、武にイライラしてもらえる要素をいくつも散りばめています」

「くすぶり女とすん止め女」
Ⓒ「くすぶり女とすん止め女」製作委員会
 また、当初の武は“髪テカ日焼け男”ではなかったらしく、原口さんは「昭和の価値観を曲げられず、服装に疎い男性をイメージしていました。ただ、“現代的な嫌な男性”にしたほうがキャッチーになると思い、PR会社に勤務していたり、イントネーションを間違えた横文字をたくさん使ったりといった設定にしています」とボツになった武の存在を語った。