◆道長殿の自己肯定感がストップ高
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[道長の孫である若宮(一条天皇と彰子の息子)が誕生し、連日パーティが続くある日。道長を含めた貴族たちがひどく酔っている場面にて]
(紫式部は)今夜の酔っ払いたちの暴れぶりに危険を感じたので、祝宴が終わるとすぐに宰相の君と相談して、どこかに隠れることにした。
東廂は殿のご子息たちや宰相の中将などが入ってきて騒がしいので、二人して御帳台の後ろに身をひそめる。
ところが道長殿が几帳をお取り払いになり、私たち二人の袖をつかんでそばに座らせなさった。
「許してほしければお祝いの和歌を一首詠んでよ」と殿はおっしゃる。
すごく困ったけどおっかないので、お詠み申し上げる。
いかにいかが かぞへやるべき 八千歳の あまり久しき 君が御代をば ――紫式部
(今日の五十日の祝いに、いかに数え尽くすことができましょう。幾千年も続きそうな若宮様の御代を)
「おお、上手く詠んだね」
道長殿は二回ほど口ずさむと、すぐに返歌を読まれた。
あしたづの 齢しあらば 君が代の 千歳の数も かぞへとりてむ ――藤原道長
(鶴のように千年の寿命があったら、若宮の御代が千年続いても数えられるのになあ)
酔っておられてもこんなによくできた和歌を詠めるなんて、きっといつでも若宮様のことを思っているのだろう。このように殿が若宮様をもり立てているからこそ、誕生を祝うイベントや装飾も華やかさを増すのだ。
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