初心者には値動きがわかりやすいインデックスファンドがお勧め
指数と連動し値動きがわかりやすい
投資信託を初めて買う「投資初心者」の方は、パッシブ運用の「インデックス型」の投資信託(以下、インデックスファンド)がお勧めです。インデックスファンドにはさまざまなメリットがあります。
インデックスファンドは、目標(ベンチマーク)とする「株価指数(インデックス)」の動きに連動するように作られた投資信託です。ひと言で言えば、指数に採用されている銘柄を、指数の構成比と同じ比率で組み入れることで、指数と連動させる投資信託です。
したがって、「値動きが非常にわかりやすい」という特徴があります。
たとえば、指数の代表的なものとして「TOPIX(東証株価指数)」があります。これは、東証1部上場の全銘柄(2020年5月1日現在、2171社)を対象として、各銘柄の浮動株数に基づく時価総額を合計し、加重平均して計算しているもので、1968年1月4日を基準日とし、当時の時価総額を100として指数を算出しています。
そうしたTOPIXに連動しているインデックスファンドは、TOPIXが上がれば同じ程度上がりますし、逆に下がれば同程度下がります。
もう一つ代表的な指数に「日経平均株価」、通称「日経225」と呼ばれる指数があります。これは東証1部に上場、日本を代表する225銘柄の株価の平均をベースに算出されているものです。
日経平均株価に連動するインデックスファンドは、やはり日経平均の構成銘柄を組み入れて運用するため、こちらも指数とインデックスファンドはほぼ同じ値動きとなります。
リスク分散に加えコストも低い
このように、インデックスファンドは、株価指数と連動させるため、非常に多くの銘柄で構成されています。
したがって、一つの銘柄が大きく値を下げても、他の銘柄が値を上げていればポートフォリオ全体のダメージは小さくなるという「リスク分散」が図られるメリットがあります。
前述したTOPIX連動型であれば、2100社以上にまとめて投資をするわけですから、リスク分散の度合いは非常に高くなります。
そして、もう一つは、「手数料が安い」というメリットもあります。
インデックスファンドの場合、株価指数に採用されている銘柄をそのまま組み入れるため、個別銘柄を調査したり、ニュースやマーケット状況などを分析したりといった手間がかかりませんし、頻繁に売買する必要もありません。
そのため、運用にかかるコストが低く抑えられているため、アクティブファンドに比べると投資家から運用期間中に徴収する信託報酬が低くなる傾向にあります。
債券や不動産、コモディティでも
インデックスファンドの投資対象は国内株式だけではありません。
アメリカの「ダウ工業株30種平均(NYダウ)」や「S&P500」など、海外の株価指数に連動したものもあります。
海外の株価指数で言えば、「MSCIコクサイ・インデックスファンド」「MSCIエマージング・マーケット・インデックス」は押さえておきましょう。
MSCIとは、「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」が公表している代表的なグローバル指数で、世界の機関投資家が使っています。いずれも、この株価指数に連動するインデックスファンドです。
MSCIコクサイ・インデックスファンドは、日本を除く先進国22ヶ国に上場する大・中型株のうち、約1300銘柄を採用。時価総額でみて市場の約85%をカバーしているものです。一方のMSCIエマージング・マーケット・インデックスファンドは、新興国26ヶ国の1400銘柄を対象にしています。
つまり、この2つにTOPIXを合わせると、実に世界49ヶ国、4800社余りの株に投資できるというわけです。
また、投資対象となる資産は株だけではありません。国内債券では「NOMURA-BPI総合」や「DPI総合」といった指数に連動するインデックスファンドがありますし、海外債券では「バークレイズ・キャピタル米国総合指数」や「シティグループ世界国債インデックス」に、不動産投資信託では「東証REIT指数」や「S&PグローバルREIT指数」、「S&P新興国REIT指数」。そしてコモディティ(金や原油などの商品)でも「S&PGSCI商品指数」や「ドイツ銀行グループ商品指数」といった指数に連動する商品があります。
上場している投資信託「ETF」
なお、投資信託の中には、上場しているものがあります。「ETF」と呼ばれるものです。ETFとは、ExchangeTradedFund(エクスチェンジ・トレーデッド・ファンド)の略。エクスチェンジとは、取引所のことで、ファンドは投資信託を指します。つまり株のように、「取引所で取引される投資信託」なのです。
2020年3月時点、東京証券取引所に上場しているETFは、実に221本もあります。
その内容は、TOPIXや日経平均株価といった日本の株価指数はもちろん、NYダウ平均株価、MSCIコクサイ、MSCIエマージング、ハンセン中国企業株指数といった国内外の株価指数に連動しています。
さらには、債券や不動産投資信託(REIT)、金やコモディティなどの指標に連動するようなものまでさまざまあります。
株の特徴を持った投資信託
ETFの多くがインデックスファンド型で株価指数に連動するタイプのため、わかりやすく、分散投資ができ、少額からでも投資できるといった特徴は投資信託と同じです。
しかし、通常の投資信託とは異なる特徴も持っています。
まず販売会社は、通常の投資信託が特定の取扱証券会社や銀行であるのに対し、ETFは国内のものであれば、全銘柄ともに全国の証券会社であればどこでも購入が可能です。
また、リアルタイムで売買することが可能です。通常の投資信託は1日1回算出される基準価額を基にするため、1日1回しか取引できません。
しかも基準価額は取引終了後に算出されるため、実際の約定価格が判明しない段階で売買することになります。
しかしETFであれば、取引所の立会時間内でならいつでも売買することができ、リアルタイムで変動する市場価格が基準になります。そのため相場の動向や取引価格を見ながらいつでも売買することが可能になるわけです。
信託報酬が安いというメリットもあります。インデックス運用型の投資信託がおおよそ0・100 ~1・900%であるのに対し、ETFはおおよそ0・060 ~0・950%と低くなっています。そして株のようにレバレッジをかける「信用取引」も可能です。
こうした特徴を持つETFなので、売買の方法も株とほとんど同じです。取引したい時点の価格を見て、証券口座を通じて売買注文を出します。注文の方法も株と一緒。いくらでもいいから売買するという「成行(なりゆき)注文」、そして指定した値段で売買する「指値(さしね)注文」の2つがあります。
少し変わった投資信託のETF。8割近くの銘柄が2万円以下ですので、投資資産の一部で取引してみるのもいいでしょう。
森永 康平(もりなが・こうへい)
金融教育ベンチャーの株式会社マネネCEO、経済アナリスト。
証券会社や運用会社にてアナリスト、ストラテジストとしてリサーチ業務に従事。
その後はインドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて法人や新規事業を立ち上げ、各社のCEOおよび取締役を歴任。現在は複数のベンチャー企業のCOOやCFOも兼任している。
日本証券アナリスト協会検定会員。著書に『MMTが日本を救う』(新書/宝島社)や、父・森永卓郎との共著『親子ゼニ問答』(新書/ KADOKAWA)がある。
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