〈彼の視線を感じた瞬間、時計を見たら11時1分……エンジェルナンバーだ〉

投稿の内容を説明しながら、亜紀さんはため息をつく。

「一体、なんの妄想でしょう。夫婦で彼女のアカウントを見ながら、意味がわからない……と、顔を見合わせました」

◆相手は既婚者なのに

忍ぶ恋も人生の味わいだろうが、相手が特定される形でネットで発信されるのは普通に困る。

亜紀さんより少し年上のヒナさんは、物静かな印象の女性だった。服装はジーンズにニットと、ごくシンプル。愛用のブレスレットは、控えめなサイズのパワーストーン。お酒が入ってもニコニコと、連れだって来ていた友人の話を聞いているような感じだった。

ツインレイ沼202409
だから、意外すぎる情熱的な一面に驚いた。一般にSNS上でキャラが豹変する人はめずらしくないが、ヒナさんは次第に行動も豹変していった。

「SNSで語っていたようなツインレイの話を、店のカウンターでも積極的にするようになりました。夫に対し、『あなたはまだ覚醒していないだけ、私にはわかる!』『みんなはツインレイに出会っていないから、この感覚が理解できないんだ!』『彼の家族? ツインレイに試練はつきもの!』と。

妻である私のいる場でも挑戦的な態度をとってくるので、すっかり怖くなってしまいました」

恐怖を覚えたのは亜紀さんだけでなく、常連客もだった。オーナーの家族に失礼だろうととがめられ、その場は黙っても、またすぐにツインレイ語りがはじまる。微妙な空気がたびたび流れ、足が遠のく常連客も少なくなかった。

「お客様との距離を適切に保つのは接客業の基本ですから、常に気をつけていたポイントで、私の目からは夫に隙はなかったと思います。でもこうも情熱的に暴走されると、『期待させるようなことしたんじゃないのー?』みたいな、ゲスい勘ぐりも発生して……。

ネットへの書き込みもありましたし、そのうち子どもたちの耳にも入るんじゃないかと、夫婦で心労が積もっていきました」