ところが、あるときから状況が一転した。常連客のひとりである女性・ヒナさん(仮名)が、亜紀さんの夫を、自分の「ツインレイ」であると主張しはじめたのだ。

ツインレイ沼202409
ツインレイとは、スピリチュアルコンテンツでは「魂の片割れ」と説明されている。「Ray」はそのまんま訳すと「光線」。一つの光=魂だったものが二つにに分かれて生まれてきた、という感じのものらしい。要は「この世でひとりの、運命の相手」だろう。

少女漫画の金字塔『ガラスの仮面』で、社会的立場も年齢差もカップルとしてはかなり無理のある、主人公のマヤと真澄が、幾多の困難にぶつかってもなお「魂の片割れ……!」と惹かれ合う展開があるが、あれもツインレイだと説明できそうだ。

冒頭のルイーセ女王のInstagramで登場した「ツインフレーム」は、この世に数人いる魂のパートナーなんだとか。対してツインレイはたったひとりの相手であると、説明しているWEBサイトを多々見かける。つまり、後者のほうが覚悟がキマってる印象である。

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また、「ツインレイは体の相性が抜群」だの、「ツインレイと出会うと、前兆として生理不順になる」だのという解説も多く、ネットで検索すればするほど不思議な森へ迷い込んでいく感覚があった。

◆妄想が加速していく

「ヒナさんと交流のある、ほかの常連客が私に教えてくれたことから発覚しました。彼女はSNSで店の名前を出しながら、自身の主観を発信していました。ハッシュタグは、#ツインレイです」

亜紀さんから送られてきたヒナさんの投稿スクショは、こんな感じのことが書かれていた。ここに登場する「彼」とは当然、亜紀さんの夫である。

ツインレイ沼202409
〈今日のお通しは、私の大好きなバルサミコ味。これは、彼が私に送ってくれるサイン〉

〈彼はまだ覚醒していない。でも、私とのつながりを感じはじめているはず。同じ音楽が好き、映画が好き。猫が好き。シンパシー!〉

〈彼は既婚者だけど、これはツインレイの試練として定番なんだよね〉