ジョナサン・グレイザーのスピーチに対して賛否両論が 生じる
彼の発言は賛否両論を呼ぶことになった。3月18日のこと。公開文書では1,000人以上のユダヤ系クリエイターらが当スピーチを「世界中で反ユダヤ主義が助長される」として非難した。それに対して反応したのがケン・ローチ監督ら。彼らはグレイザーの発言を「勇敢」で「莫大な価値がある」と評価。彼を擁護するスタンスを示した。
ちなみにグレイザーはまだスピーチへの反対運動に公式な対応を行っていない。しかし監督は今週初め、ガザ支援のために医療支援を募る「Cinema for Gaza」のオークションに『関心領域』のサイン入りポスター7枚を寄付することで支援の意思を示している。
公開文書「グレイザーへの攻撃は業界に沈黙を強いる」
今回発表された公開文書では、「我々は、2024年アカデミー賞でのジョナサン・グレイザーの声明を支持するユダヤ人のアーティスト、映画製作者、作家、プロのクリエイターである。我々は業界の同胞の中に、彼の発言を誤解し非難する人々がいることに驚いている」。そうグレイザー反対派に反応した。
続けて「彼らによるグレイザーへの攻撃は、すでに32,000人以上のパレスチナ人を殺害し、何十万人もの人々を飢餓の瀬戸際に追いやったイスラエルのエスカレートする軍事行動からの注意をそらす危険なものだ。我々は、何十年もの間、パレスチナとイスラエルで殺害された人々、10月7日のハマスの攻撃で殺害された1,200人のイスラエル人、人質に取られた253人、全ての犠牲者を悼んでいる」。こうして文書は紛争への反対を表明。
さらに、「グレイザーに対する攻撃の影響は、我々の業界に沈黙を強い、我々の業界が大切にすべき要素である言論の自由や異議申し立てを抑圧する風潮を助長している。グレイザー、トニー・クシュナー、スティーヴン・スピルバーグ、およびさまざまなバックグラウンドを持つ数え切れないほどのアーティストが、パレスチナ市民の殺害に抗議している。我々は誰しも、“反ユダヤ主義を煽る”などと誤った非難を受けることなく、同じ抗議を行うことができるはずだ」と、グレイザーへの攻撃がお門違いであるとのスタンスを明示した。
公開文書「ホロコーストの記憶を尊重し、『二度と起こさせない』と声を上げる」
さらに「アウシュヴィッツ記念館館長のピョートル・M・A・チヴィンスキ博士が書いたように、『(『関心領域』は)ホロコーストを描く映画ではない。今作は主に人間性とその本質についての深い警告だ』。この警告を1つのグループだけに当てはめるべきではない。我々の人間性を保持し、相互の生存を確保するためには、どこかのグループが残虐行為や殺りく行為に直面している際に警告を発しなければならないのだ」と映画のメッセージを改めて説明。
「我々は、国際法の専門家や主要なホロコースト研究者を含む多くの専門家が『発生中の大量殺りく』と認めたものを正当化するために、ユダヤ人のアイデンティティとホロコーストの記憶が武器として利用されることを非難する。ユダヤ人の安全とパレスチナ人の自由の間における間違った判断を拒絶する。我々は、すべての人質の安全な帰国とガザへの即時な支援物資の提供、およびイスラエルのガザへの継続的な爆撃と包囲の終結を求めるすべての人々を支持する」と現状に遺憾の意を示した。
最後に文書は「我々はホロコーストの記憶を尊重し、『誰に対しても二度と起こさせない』と声を上げる」と締め括られ、ファミリーネームのアルファベット順に151人分の署名(英文記事下部参照)が続いている。
映画『関心領域』は5月24日(金)日本公開。