クズ男に騙され、そのクズを殴ってやりたいという思いからボクシングを始めた市役所ガール・ほこ美ちゃん(奈緒)。そのクズこと葛谷さん(玉森裕太)のお色気あふれるクズっぷりが見どころだったドラマ『あのクズを殴ってやりたいんだ』(TBS系)でしたが、前回あたりからクズがなんだかナーバスな一面を披露し始めておりまして、そうなってくるとセクシーじゃないんだよなぁと思っていたところ、今回はいよいよ泣きました。しかも女の前で。

 ここに至り、ちょっと見方を誤っていたと感じた次第。第5話、振り返りましょう。

■動かしたいのはこっちだったか

 ここまで、クズ男に翻弄されつつもボクシングを通して精神的自立を獲得していく女性を描くドラマだと思っていまして、それにしちゃ主人公のほこ美というキャラクターが良くも悪くも安定した人物だなと思っていたのですが、このドラマが動かしたかったのはクズのほうだったんだな。今回、ほこ美ちゃんを尻目にクズこと海里くんが改心していく様が描かれました。

 7年前にクズとの試合後に倒れて亡くなってしまった先輩ボクサー・平山大地(大東駿介)の練習ノート。そこにはクズとの試合前日に、大地パイセンが書き残していた言葉がありました。

「自分にできることを考えて、前に進む」

 その言葉を胸に、海里くんはクズ卒業を決意。カメラマンとしてイチから修行するために、売れっ子っぽいスタジオカメラマンに弟子入りすることにしました。

 さらに、確執のあった父親にも頭を下げに行く海里くん。この父親は県会議員で、勝手にボクシングやって人を殺した海里くんのことを忌み嫌っており、すげない態度です。それでも海里くんは、クズ卒業と社会復帰に向けてひとつひとつ筋を通していきます。

 そうして心を入れ替えた海里くんでしたが、やはり「人を殺した」という過去は消えません。ほこ美に勧められて応募した市の写真コンテストは大地パパからクレームが入って審査前に選外に。さらに、弟子入りしたお師匠さんからも「過去のいろいろ」を理由に採用を取り消されてしまいます。