「この2つのエピソードにおいては、“スタンガンを当て合うという過激さ”と“露骨な下ネタ”が地上波にそぐわないというのが明白であり、構成そのものはバラエティ番組。『麻酔ダイイングメッセージ』と『右寄り左寄り』は実験的な映像化、『スポーツスタンガン』と『童貞人狼』は地上波のコンプライアンスに挑戦状といった形でしょう」

 過激で挑戦的な映像や実験的な映像が、いままでまったくなかったわけではない。YouTubeではさまざまなタイプの過激な映像があふれているし、たとえば単独ライブで過激な映像を流す芸人もいる。とはいえ、いずれもメジャーなフィールドでの発表ではなく、その映像に触れる人も限られる。

 そんななか、今回の『KILLAH KUTS』はAmazon Prime Videoという有料サービスではあるものの、それなりに視聴者が多い場で配信されたということの意義は大きい。

「ネット配信のバラエティ番組は『ドキュメンタル』や『トークサバイバー』など、実験性が高いもの、あるいは露骨な下ネタや暴露を含みがちです。もちろんネット配信が“地上波ではできないことができるメディア”ですが、『KILLAH KUTS』では必ずしも面白さだけを求めていないのが新しいと思います」

 藤井氏は『KILLAH KUTS』の配信に寄せて、〈なるべく面白くて、なるべく見たことのない企画・番組を作りたいと常々思っています。それは当然、番組を見てくれる人、楽しみにしてくれる人たちの為なのですが、一方で、そのうちの何割かは、自分が「見てみたいから」「やってみたいから」だったりもします。そして、今回のこの『KILLAH KUTS(キラーカッツ)』にはその割合が普段よりもちょっと多めに含まれている気がしています。〉とコメントしている。挑戦的な映像を作ること自体が大きな目的となっているのだ。

「地上波ではスポンサーの影響も大きく、無難な番組作りになりがちで、バラエティ番組が大きく変化できない状況があります。そのなかで藤井氏はつねにチャレンジグなことを続けているものの、やはり地上波だけでは限界がある。そこで『KILLAH KUTS』という、より実験性の高い番組を配信することで、テレビ業界全体に一石を投じていると見ることもできるでしょう」