三吉さん演じる“三好彩花”は、主人公・朔也の母の素顔を知るための鍵を握る人物であり、過去の傷を抱えるミステリアスな女性。撮影を振り返り「こんなにも心が苦しかったのは初めてで戸惑った」と心の内を明かしてくれた。
「私には家族というコンプレックスがありました。幼少期の記憶から、大切にしたくてもできない、どう向き合っていいかわからないという想いをずっと抱えていたんです。でも、三好彩花を演じながら、もし私が今、家族と向き合うことができたなら、たとえコンプレックスを乗り越えられなくても、何か少しでもアクションを起こすことができたなら、それがすべて三好彩花という役に投影できるかもしれないと思ったんです。なので、家族と向き合う場を設けたり、家族について改めて考えたり。三好彩花という役を理解する、体現するのと同時軸で自己探究をする日々でした」
常に背中合わせで三好彩花がそこにいるような撮影の日々は、心身ともに削られる現場だったと振り返りつつ「三好彩花は今の私に必要な役だった」と三吉さん。
「家族との関係が一気にポジティブに解消されたわけではないけれど、これまで進めなかったラインをひとつ越えることができたのは私にとって大きな一歩でした。完成作品を観たとき、ちょっとだけ安心したというか、ホッとした自分がいて。改めてこのタイミングでこの作品に携われて良かったと思いました」
原作小説では2040年が舞台の未来物語として描かれていた本作だが、想像を遥かに越える速度でテクノロジーが発展していることを鑑み、本作では舞台を2025年へと前倒しに。亡くなった人をVRで甦らせたり、リアル・アバターという仕事が存在したりという世界が、もう遠い未来ではない話として描かれている。
「最近はAIも身近になりましたし、SNSを通じて全世界の人とのコミュニケーションも簡単になりましたよね。そういった部分が必要なことももちろんありますが、でも、私が大事にしたいのはやっぱり実際にお会いして、お話して...という時間。人間関係を築く上で実際に対話して見えてくる部分ですとか、感じられる雰囲気を大事にしたいと思っているので、アナログな部分は失われてほしくないです。なので、もしVRサービスが実現化されてもきっと利用しないと思います。亡くなってしまった愛猫ちゃんやおじいちゃんを蘇らせられたらとも想像しましたが、今は想い出のまま大切な記憶として残しておきたいです」