「モコは過去に骨折などの怪我をして、骨に異常があったようです。右手の肉球を触られるのを嫌がりました。高いところに飛び乗る、飛び降りる、走るなどの動作は見せませんでした」
その姿に重なったのは、3か月前に他界した義母。義母も右手に不自由があったため、パパひつじさんは「猫になって会いに来てくれた」と思ったのです。
モコちゃんとの生活が始まると、長男さんの行動に少しずつ変化が。大きな音が苦手なモコちゃんを気遣い、大きな声を出さなくなったのです。保護から数日で、癇癪を起こす頻度は激減。自分を愛してくれる長男さんに、モコちゃんはいつもぴったりくっついていました。
◆みんなが寝てしまうと鳴いて起こす甘えん坊
「長男いわく、動物を飼うことは小さな許しの連続で、それが人を許せることに繋がったそうです。許すことができるようになったことで、怒りのコントロールができ、癇癪が収まったと感じたようでした」
甘えん坊のモコちゃんは呼んでも呼ばなくても近くに来てくれ、家族の体に乗ることが大好き。みんなが寝ると寂しくて、鳴いて起こそうとしました。
「長男は、モコに慕われてたんだと思う。“愛される”は経験しやすいけど、“慕われる”って人間界では経験できないことも多い。“慕われる”から生まれる感情でしか育てられない人間性があるとしたら、モコとの日々はとても貴重な経験になったのだと思います」
◆長男を救ってくれた愛猫が天国へ
出会って3年経つ頃には長男さんは癇癪を起さなくなり、中学へ入学。ようやく訪れた穏やかな日々は長く続くように思われましたが、モコちゃんに異変が。
単身赴任中だったパパひつじさんは年末に帰省した際、モコちゃんの反応が鈍いことに違和感を覚えたそう。
「年始に赴任先へ戻ろうとした時、モコは足をプルプルさせ、倒れてしまいました。その後は通院し、腎臓の治療などをしていましたが、体調はよくなりませんでした」