◆母に愛されすぎた“末っ子長男”の不幸
好き嫌いは仕方のないことです。でも、もし自分の弟が同じような人間になってしまって、恋愛がうまくいかなかったり、飲み会で上司にドン引かれたりする姿を想像したら…私は母を恨むでしょう。もちろん、そうなる前に止めます。
彼は、その後も一緒にご飯を食べる際に「これ無理」「あれ嫌い」と言い、ちゃんと聞くと「食べたことがないだけ」ということが多々ありました。もう彼の中で成立しちゃってたんですね。“未知の食べ物=嫌い”という方程式が。
結果的に別の理由で彼とは会わなくなりましたが、私は、彼にひと言でも「俺、好き嫌い多いから食べたいもの先に言っておくね。紫は好きなもの頼んでね」と言ってほしかっただけ。好き嫌いを直せ!私に合わせろ!と言いたいのではなく、せめて自覚してほしかったなぁと思いました。もし今後彼のことを愛す女性がいたとしたら、「そのままでいいよ」とか、「ダメ!大人のくせに!」とか言うのでしょうか。それもまた、愛なんでしょうか。
この一件で、過去の苦すぎる思い出も踏まえて、私は“末っ子長男”がトラウマになってしまいました。もちろん出会ってすぐに「何人兄弟?」と聞くようなことはしませんが、「なんか合わないぞ…」と思ったら姉が2人いた、みたいなことは今でもあるので、単に相性が良くないのでしょう。
愛をたっぷり注いで育てるのはとてもよいこと。でも、行き過ぎた愛には要注意。恋愛だけでなく、親子や姉弟でも、ですね。
<文/七尾紫 イラスト/織田繭>
【七尾紫】
元・恋愛体質のフリー編集者。ダメ男に好かれてしまう特異体質を持つ。DVと不倫以外は大体やられている