…嫌な予感がしました。でも、ビールも焼き魚もワサビも、苦手な人はいるっちゃいるか…などと考えつつ、メニュー表にチャンジャを見つけたので、「私チャンジャ好きだから頼んでいい?」と聞きました。すると彼は、「チャンジャって何?」と言うのです。
まあ、知らない人もいるだろうし、好き嫌いが分かれる食べ物です。とりあえずチャンジャの説明をして、「一度食べてみたら?おいしいよ」と言ってみました。でも彼は「俺、辛いもの食べられないから」とひと言。もう我慢できなかったので、「じゃあ任せるよ。何が食べたい?」と聞くと、「唐揚げとウインナー」と…。
はい、“子ども舌”確定のお知らせです。私は人の食の好みをあまり気にしません。ですが、彼の場合はちょっと偏食が過ぎるような…。思い切って「お母さん、ご飯作るの大変そうだったでしょ(笑)」と探りを入れてみると、彼から返ってきたのは、「ううん、お母さんが食べさせてくれなかった」という、衝撃的なひと言でした。
◆クセが強い食べ物は、全部ママが排除していた!
そのあと詳しく聞いたのですが、彼は母と姉3人という家族構成らしく、姉は3人とも私より年上でした。つまり、待望の男の子。かわいがられるのもわかります。
お母様は、彼が大学生になるころまで、いわゆる“大人が好きな食べ物”を一切食べさせなかったそうです。ワサビをはじめとした薬味類、納豆などのクセが強いもの、苦いもの、辛いものを、「これはやめておこうね」と、彼の前から排除していたのだとか。
さらに、姉たちは好きなものを食べていましたが、彼に対してはお母様と同じようにしていたそうです。こうして、唐揚げやオムライス、カレー、ハンバーグといった、子どもが好きなものしか食べられない成人男性が爆誕。ちなみに、焼き魚が苦手なのは自分で魚をほぐしたことがないからでした。
正直、「哀れ」だと思いました。救いだったのは、彼自身もその環境が異常だと気づき始めていたこと。「それは“苦手”とか“嫌い”とは違うよ。食べたことないだけじゃない?」と説教めいたことを言ってしまったのですが、「やっぱりそうだよね。チャンジャ、食べてみようかな」と言ってひと口食べていました。結局、口に合わなかったんですが。チャンジャを口に運ぶ彼を見て、なんだかすごく感動したのを覚えています。