杉材の対中輸出激増のワケ

この輸出活況を支えているのは、紛れもなく中国である。2017年、日本木材輸出の40%は中国市場向けだった。そして2018年1~4月のシェアは、なんと70%まで上昇しているのだ。

2017年、九州経済圏が輸出した原木のうち80%は杉材だった。杉は北半球の温帯に幅広く分布し、家具製作におけるコストパフォーマンスは高い。

しかし日本杉の香りは刺激的で、色差は大きく、節も多いなどの難点から、これまで中国では、梱包用の箱やお盆などの小型用途が中心だった。また中国の建築法規「木結構設計規範」は、日本杉の柱材としての使用を許可していなかった。これは改正されて、2018年8月からは使用できるようになる。

日本木材輸出振興協会は、高所得の中国沿海部では、日本風情の木造建築が増えつつある、と分析している。内装用資材としての木材利用も増えている。

日本の杉材は、中国の旺盛な需要に応えられるのだろうか。杉の成長には20年前後かかる。日本は第二次大戦以降、計画的に造林し、その中で杉の比重は44%もある。その上、成熟林は多い。供給力は十分にありそうだ。

新しい輸出商品に育つ

筆者は2000年代、毎年内蒙古自治区を訪れていた。そのころ禿山に、さかんに植林を行っていた。最初は、植林した組織、例えば、人民解放軍〇〇部隊、などの立て看板が誇らしく輝いていた。

しかしその看板はすぐに傷み、樹木は荒れてきた。中国人に限らず大陸の人間とって、自然は制圧するものであり、自然と共生する、という思想は薄いようだ。長期戦略より、現在の収益を優先させる。計画的な造林は困難を伴う。

日本人は緻密な計画を、着実に遂行していく。安定的な供給を望むなら、最高のパートナーだろう。このウインウインの関係は当面続きそうだ。

文・高野悠介(中国貿易コンサルタント)/ZUU online

【こちらの記事もおすすめ】
女性を超える関心度!?「オトコの美活」意識調査結果
住宅ローン控除(減税)をフル活用するための基本の「き」
実はハイリスクなライフイベントTOP5。転職、住宅購入、結婚……
2018年マンションの「駆け込み」需要が起きるってホント?
じぶん時間がもっと増える「ちょこっと家事代行」3選