さて、「裏ビデオ」、懐かしい響きである。私が一番印象に残っているのは、1982年に出回った『洗濯屋ケンちゃん』である。

 まだビデオデッキがVHSの時代だった。当時話題にはなったが、自分で買いに行く勇気はなかった。

 知り合いの知り合いを探してようやくテープを手に入れた。深夜、ビデオデッキにそれを入れる時の興奮した気持ちを今でも思い出す。

 だが、何度もダビングされたそれは、画面がボケボケで、肝心のシーンもよく分からない代物だった。

 しかし想像は発明の母。自分なりの想像力を精一杯高めると、見えないはずの全裸の女体が目の前に現出し、これまでになく興奮したことを憶えている。

 入社してからしばらくして、先輩に誘われて「ブルーフィルム」を何人かで見たことがあった。

 コソ泥が家に入ると、女性があられもない格好で寝ている。それを見たコソ泥が女性に覆い被さり、手籠めにする。そんな他愛もないストーリーだが、SEXシーンだけカラーになるのが新鮮で、見惚れたものであった。

 アサヒ芸能によれば、和製裏ビデオ第一号は、79年から80年にかけて関西圏で出回ったもので、女優は大阪ミナミのスナックのママだといわれているそうだ。

 80年頃、会津若松のラブホで撮影された「消し忘れビデオ」が人気を博したという。

 VHSのビデオデッキ普及に一役も二役も買ったのが「裏ビデオ」で、『洗濯屋ケンちゃん』を見たさにビデオデッキが何十万台と売れたそうだ。

 80年代の裏ビデオ全盛期には、『将軍家光』『遊女』など、本格的なセットを使ったものが登場し、中にはエキストラまで大量動員した映画顔負けのものも出現したという。

 それだけかけても儲かったということだろう。

 ちなみに『将軍家光』には裏ビデオの女王といわれた田口ゆかりが出ていた。山口百恵に匹敵する「アイドル」だったな。

 芸能人の「流出ビデオ」というのも人気ジャンルだった。たいていは少しだけ似ているAV女優が出ているだけだったが、それでも何本か買ったことがあった。

 1990年代の後半、某作家とニューヨークへ遊びに行き、かの地のビデオ屋に入り浸って、男十本もの裏ビデオを買い込んだことがあった。

 持って帰るのが大変だったが、友人たちに分けると喜ばれた。だが、見てみると、男の逞しく長すぎるアレと、女性の喘ぎ声の大きさに辟易し、ゴミ回収の時に捨ててしまった。
「裏ビデオ」「ヘア・ヌード」か、懐かしいな。どこかに一本ぐらい残ってないか。今夜探してみよう。