「使い古された表現ですが、昨今はテレビ離れが激しく、若者は本当にテレビを見ない。あらゆる番組が散々な視聴率で討ち死するなかで、グルメ番組は“まだマシ”なので、いきおいグルメものに流れる結果になります。グルメであれば視聴者は老若男女を問いませんし、画面が映えるのでチャンネルを変える手も止まりやすい。YouTubeやTikTokに慣れた若者は長時間動画に耐えられませんが、グルメならじっとテレビを見続ける必要もありませんしね。他にも理由はあります。VTRを中心に進行すれば、スタジオは簡単なセットで良く、タレントも少なくて済むので、制作費は安く収まります。飲食店にアポを取って、タレントを使わずにスタッフがロケをして、ナレーションやテロップなどで進めれば、驚くほど低予算で番組が作れます。また、グルメなら炎上リスクも少ないことも、グルメ番組が重宝される一因でしょう」(民放バラエティ番組制作関係者)

 お金を掛けずに数字が稼げるなら、これをやらない手はない。4月第1週の視聴率ランキングを見ても、『ぐるナイ』と『オモウマい店』はしっかり上位にランクイン。しかし、グルメ番組には厳しい現実もある。

「広告業界では美人(beauty)、赤ちゃん(baby)、動物(beast)を使うと広告効果が高く、『3Bの法則』と呼ばれますが、これをやる人間は業界内であまり評価されません。“安直なやり方に頼った”と見られるということです。テレビ業界におけるグルメ番組も同じ。食べ物は本当に煮詰まった時に手っ取り早く数字を稼ぐ方法で、いわば最後の手段です。それが溢れかえっているということは、“テレビ業界もいよいよ……”という証拠でしょう。グルメがいかにテレビで強いかを知るには、長時間の特番や情報番組を見ると分かります。テレビ業界では、チャンネルを変えるタイミングとなる◯時55分から◯時5分ぐらいまでの時間を『またぎ』と呼び、ここに一番強い映像を持ってきますが、グルメは動物や衝撃映像と並ぶエース格。またぎを注意して見ると、テレビ局がどうやって数字を稼ごうとしているかが分かると思います」(広告関係者)

 食欲を刺激するような映像は魅力的だが、あまりに多いと“お腹いっぱい”になるのは実際の食事と同じ。新たに始まった2つのグルメ番組の成否は、今後のテレビ業界を占う指針となりそうだ。