でも自発的なので、忙しくなったとしても、時間の使い方が自然と上手になっていくんです。自分ひとりだったらぐちゃぐちゃになるかもしれませんが、事務所をはじめ、周りがスケジュールを管理、調整してくれてもいますし。
それにいきなり環境が変わって忙しくなったわけではありません。デビューからずっと、お芝居と物づくりの二足のわらじです。時間をかけてやってきているので戸惑いもありません。毎年毎年、今年のほうが去年を更新していると実感できることは幸せです。
◆40歳以降の誕生日は、1年ちゃんと人に感謝できたか確認する日
――ちなみに、やりたいことは口に出していくタイプですか?
井浦:口には出しません。言霊は信じていますが、「何々をやりたい」という言葉はどんどん生まれますし、それでやっていないと苦しんでしまいそうですから。「やりたい」ではなく「やろう」となったとき、設計図がちゃんと出来上がってから、言うタイプです。芝居に関しては、出会いたい監督がいたりする場合は、事務所に話したりといったことはありますが。
――最後に。9月に50歳を迎えたばかりですが、節目に思うことはありますか?
井浦:そういうのは正直ないんです。数字だけはどんどん増していきますが、特に変わりません。人の誕生日を祝うのは好きですが、自分はスルっとその日を迎えて過ぎていけるほうが気楽です。
ただひとつあるとすれば、40歳を過ぎたくらいから、誕生日は、自分を祝うというより、1年ちゃんと人に感謝できたかなと確認する日になっています。最大限、周りに感謝する日。だから50歳は、もっと感謝を増していきたいと思っています。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
(C) 2024「徒花-ADABANA-」製作委員会/DISSIDENZ
【望月ふみ】
70年代生まれのライター。ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画系を軸にエンタメネタを執筆。現在はインタビューを中心に活動中。@mochi_fumi