◆「母と娘」の関係で毒がより濃縮されやすい
――なぜ、今回「毒父」ではなく、「毒母」かつ「母親と娘」に絞ったのでしょうか?
旦木:「母親と息子」よりも、「母親と娘」のほうが、よりダイレクトに毒を受け継ぎやすいと感じたことからです。「母親と娘」は、同性であるがゆえに、「母親と息子」よりもお互いに同一視や共感がしやすく、一方で反発や拒絶もおこりやすいと言えます。
大人になって、仕事や自分が築いた家庭にかかりきりになり、両親とは疎遠になる息子が多い一方で、自分の家庭を持ったあとでも、母親との関係を維持し続ける娘は少なくありません。だからこそ、母と娘の関係は永く深く濃密になりやすく、毒に気付きにくいうえに濃縮されやすいのではないでしょうか。
また、息子の場合は異性ということもあり、比較的早めに境界線が自然と引かれる場合が多いと思いますが、娘の場合は、人生で3つのターニングポイントに差し掛かったときに境界線が引けるように思います。それは、「結婚」「出産」「介護」の3ポイントです。
「結婚」は、家を出ることで母親と距離ができ、夫という他人と暮らすことで自分の家庭と比較することができるようになるから。「出産」は、自分が母親になることで、自分の子育てと母親の子育てを比較することができるようになるから。「介護」は、一度距離を置いた母親と再び距離が縮まり、子ども時代の感覚と現在の感覚とを比較できるからです。
私は「毒親になりきらないための親の会」というLINEグループを主宰していますが、そこである40代の女性から興味深い相談を受けました。毒母育ちの彼女は、現在15歳の娘の恋愛に、自分ごとのようにのめり込んでしまったと。
そして娘が彼氏と別れたとき、「あんないい人は他にいないのに!」と娘を責め、娘との関係が悪くなってしまったというものです。このことは、彼女自身が娘さんとの境界線が引けていないから起こってしまったことだと思います。