目力はやっぱりお父さんのほうがばきばきだが、父も息子も視線の演技が共通している。ただし、視線のベクトルが違う。沢村が相手俳優にばきばき目力のビームを送るのに対して、野村は逆に相手の視線を受けるのがうまい。
『夫の家庭を壊すまで』で主人公・如月みのり(松本まりか)に恋するピュアな高校生、三宅渉役を演じる野村は、松本と画面を共有する中で常に彼女の視線を受けている。受けてそれを反射するわけでもなく、ただ受け続ける。おそらく彼はそうやって時間をかけて自分の演技のタイミングを見計らっているんだと思う。
◆ブレイクするポテンシャルそのもの
では、タイミングがきたら彼はどう演技するか。若手中の若手にしか許されない反則技を使うのである。第3話、みのりとの事実上のデートである海辺のレストランでの場面。アイスドリンクを飲んだ渉が、口元にクリーミーな泡を付着させる。
ベタといえばベタな可愛さ。でもあざとくはない。どこまでも人懐っこいその泡。何度もやられては効果が薄れる。受けて受けて、タイミングを待ったからこそ、一回限りの反則技的な口元のアワアワ。破壊力は絶大。
この泡効果は、彼が確実にブレイクするポテンシャルそのものでもあった。実際、同作を追い風にして、疾風怒濤、スターダムを駆け上がり中なのだが、でも彼のポテンシャルが最初に提示された作品は他にある。
◆手首も含めた右手
金子隼也と共演したBLドラマ『パーフェクトプロポーズ』(フジテレビ、2024年)だ。金子扮する主人公・渡浩国は連日の仕事で精神、肉体ともに疲弊するサラリーマン。ある夜、へろへろの帰路で中学時代の友人である深谷甲斐(野村康太)と再会し、甲斐が居候するようになる。