◆小林聡美だけでなく杉本哲太とも
あるいは奈津子が「おばちゃん」と親しげに呼ぶ佐久間絢子(由紀さおり)の自宅の網戸を修繕した帰り道。横に並んで仲良くぷらぷら歩くふたりが、もう半世紀の付き合いだねといまさら確認し合って、「なっちゃんは105歳」、「ノエちゃんも105歳」とふざける場面がある。
105歳になった自分たちにつかの間なりきる姿が、この先、さらに半世紀続くかもしれない相棒関係を端的に再現してくれている。しみったれず、どこまでも清々しくからっとしている。でも情感はあるツーショットの名場面だ。
そしてどうやら相棒は小林だけではないらしい。野枝がしきりに「アニキ」と呼ぶ兄・太田厚志役の杉本哲太とも固有の相棒関係にある。第2回で団地の敷地で密かに住民たちが猫にエサやりをしていたことが問題になり、駅近くで塗装会社を営む厚志が猫を引き取ることになる。
猫を迎えにきた厚志を野枝と奈津子が見送る場面。カメラは、厚志が運転席に乗る車体を正面から写し、助手席側の外から野枝が「ちゃんと可愛がってよ」とうるさく言う。
運転席に厚志役の杉本がいて、空席の助手席を挟んでそのすぐ外から窓枠に腕をかける小泉が、この車内空間に相棒同士の空気感をいきわたらせている。運転席側のすぐ近くにいる小林は、ここは一度相棒関係を譲るよという感じで微笑んでいるように見える。
◆小泉今日子の相棒関係とは、専売特許みたいなもの
そりゃあさ、商業作品で活躍するプロの俳優なんだから、プロの相手俳優とは共闘する意味での相棒関係を結ぶでしょという指摘があるかもしれない。それも当然そうではあるのだけれど、でも小泉今日子の相棒関係とはいわば、専売特許みたいなものなのだ。
ここで、テレビドラマ史上のベストオブベストコンビが登場する小泉の主演作『最後から二番目の恋』についてふれておきたい。同作で小泉の相棒となるのは、中井貴一。中井扮する鎌倉市役所職員・長倉和平と都内から鎌倉の古民家に引っ越してきたテレビ局のドラマプロデューサーである吉野千明(小泉今日子)が、愛すべきコンビ愛をにじませる。